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公開講座について
第3回「マンガ・アニメとものづくりの可能性」

公開講座について

講演内容

大友良英さん

マンガ・アニメとものづくりの可能性

講演「『ザクとうふ』の哲学」
…鳥越淳司さん(相模屋食料株式会社代表取締役社長) プロフィール


トークセッション「マンガ・アニメとものづくりの可能性」
…鳥越さん、小林政輝さん(ふじの井酒造代表取締役社長)
 内田昌幸さん(日本アニメ・マンガ専門学校教務部長)
 コーディネーター/吉岡和彦(新潟日報社論説編集委員)

  • 日時…2014年10月28日 18:30〜20:00
  • 会場…メディアシップ2階「日報ホール」
  • 定員…150人

 人気アニメ「機動戦士ガンダム」に登場するメカの顔をかたどったとうふの開発・製造で知られる豆腐メーカー、相模屋食料株式会社(前橋市)社長の鳥越淳司さんを迎え、マンガ・アニメと地域産業の連携をテーマにした公開講座を開きました。

採録

講演
「『ザクとうふ』の哲学」
相模屋食料株式会社 代表取締役社長 鳥越淳司さん


 なぜ、「機動戦士ガンダム」とコラボした「ザクとうふ」を世に出せたのかというのは、私の経歴が大きく影響しています。私は京都に生まれ、雪印乳業に入社し営業職として群馬県におりました。その中で2000年に食中毒事件が発生し、営業の私もお客様のもとに行き、謝罪するということが毎日続きました。最大で1日13回、土下座をしたこともあります。しかし、その「お詫び行脚」の中で学んだことがあります。私は大学を出て、当時一流といわれる企業に入り、そこに誇りというものも持っていたわけですが、大学も企業もしょせん人が作ったもの。自分がえらいわけでも何でもない。自分が誇っていいことなど、最初からなかったんだという当たり前の事実に気づいたのです。ただ、それをポジティブに考えると、プライドを自ら捨てられる人間は強いということです。
 相模屋食料に入社して数年後、「ザクとうふ」を企画したときも、当初は誰もがあきれていました。でもプライドを捨てられれば、別にそんなことは気にならないのです。自分の思いを突き詰めようというのは、雪印の営業時代に学んだことです。

 私どもが一番力を入れているのは、おとうふの基本である「木綿」と「絹」を徹底的に追求するということです。そして、おとうふを面白くする、おとうふのマーケットを広げていくということに取り組んでおります。その中で、ある意味おとうふの可能性を象徴した商品が「ザクとうふ」ではないかと考えています。
 「ザクとうふ」は2012年3月27日に発売いたしました。取材に来られた方の質問で一番多かったのが、「なぜ作ったのですか」という質問でしたが、一言で答えると「ガンダムが好きだから」です。小学校2年生からずっと機動戦士ガンダムが大好きで、ガンダムを知らない、ザクを知らない方には意味のない商品ですが、私にとっては大きな意味がある、100%趣味の商品なのです。
 機動戦士ガンダムというのは、地球連邦軍のモビルスーツ(ロボット)がガンダムで、戦う側のジオン軍のモビルスーツがザクなのですが、実はザクとおとうふには共通点があります。1つ目は、ザクも名機でありガンダムシリーズの名脇役、おとうふも伝統食であり食卓の名脇役だということ。2つ目は、どちらも量産型であるということ。ザクは数が揃うと強さを発揮する機体なのです。3つ目は、ザクはすべてのモビルスーツの基本であり、おとうふも米と大豆の文化といわれる日本食の基本だということ。こうした共通点があって、「ザクとうふ」は必然なんだと考えました。
 ターゲット層は、ガンダムのファン層である30代40代の男性。おとうふ売り場に能動的に行かない層です。その方々に買ってもらうため、ビールに合う枝豆風味のおとうふに仕立てました。そして、発売してからまずソーシャルメディアの中で盛り上がり、その後400以上のメディアで取り上げていただきました。「ザクとうふ」は1丁2丁ではなく1機2機と言うのですが、初回で14万機出撃し、計画でいうと20倍くらいの大ヒットになりました。

 ヒットの要因としては、仕掛け感のなさというようなものだと思います。あくまでも趣味の商品なので、プロモーションなどはしていませんし、ガンダムを知らない方にもわかるようにという親切設計も一切していません。 ターゲットを絞るというのは、他の業種では当たり前なのですが、おとうふは誰もが食べられないといけない商品という常識がありました。しかし、この市場で初めてターゲットを絞ったおとうふがヒットしたことで、今後はセグメンテーション(市場細分化)したカテゴリーを創出できる。「あなただけのおとうふです」というのを公然と言えるようになったという点が、一番大きかったのではないかと思います。ですので、これ以降、私どもではターゲットを絞ったおとうふを出しております。女性に絞ったもの、子どもに絞ったものですとか、いろいろな商品を提供しながら、今後もおとうふの世界を広げる取り組みをしていきたいと考えています。


トークセッション
「マンガ・アニメとものづくりの可能性」
出演/鳥越淳司さん、小林正輝さん、内田昌幸さん
コーディネーター/新潟日報社論説編集委員 吉岡和彦


◆ 日本酒のラベルに高橋留美子さんの作品を選ばれたきっかけを聞かせてください。
小林 日本酒の需要が落ち込む中、ただおいしいだけでは消費者は手を出してくれません。日本酒を飲むきっかけとして何がいいかと考えたところ、高橋留美子先生の「めぞん一刻」が浮かびました。なぜかというと、「めぞん一刻」の中のアパートでの宴会シーンに、必ず日本酒が出てくるんですね。そこで30代40代の方をターゲットに、日本酒はおいしい、楽しいものなんだというのを知っていただきたいということで、8年前に高橋留美子先生の描き下ろしイラストをラベルにした大吟醸を発売したのが始まりです。
◆ 新潟ではアニメやマンガのコラボ商品がいくつか出ていますね。
内田 「まめ坊」((株)高口又四郎商店)という大豆商品があるのですが、これは企業から日本・アニメ専門学校(JAM)のほうに「キャラクターを作ってほしい」という依頼があり、商品化されました。それと、パソコンなどの電化製品の熱を逃がすための商品で、オリジナルキャラクターが描かれたアルミ製すのこの「すのこタン。」((有)マルダイ)という商品もあります。また、「がたふぇす」という新潟市とJAMなどが連携して行っているアニメ・マンガのイベントがあるのですが、その中でJAMが古町5番町商店街の商品を擬人化のキャラクターにして、商品をPRしようという企画を昨年から行っています。


◆ コラボ商品に取り組む際に、大変な部分や難しい点もあるのではないでしょうか。
鳥越 よく言われたのが「ガンダムの世界観を、よくこれだけ崩さずに商品にできるよね」ということでした。それは当たり前の話で、大ファンですから世界観を崩すようなことをするわけがないですよね。傍から見れば苦労している点も、そこは楽しみながら、趣味でやっているので結果的に大変だとは思っていません。
小林 当社もキャラクターを使うのが初めて、先方の版元である出版社も清酒とのコラボが初めてということでしたので、最初は意思の疎通に少し時間がかかりましたが、お互いの気持ちが分かり合ってからはスムーズに進みました。
内田 キャラクターを使うことによって新たな価値を創出し、提供するというときに一番気をつけないといけないのは、一過性のもので終わってはいけないということです。まずは製品の品質が高いというのが前提にあって、そこに付加価値としてキャラクターが入ってくるというのが大事だと思います。そして、どういう価値があるのか、どれくらいの効果を出すのか、クリエーター、企業、消費者の価値観が統一されていることが必要だと思います。


◆ マンガやアニメとものづくりの連携を続けていくために、どういうことが必要かアドバイスをお願いします。
鳥越  皆さんから見れば、ザクとおとうふのつながりが無理矢理に見えるかもしれませんが、講演でも話した通り、私の中では一つにつながっているんですね。そういう意味では無理矢理つなげないというのが一番のポイントでしょうか。両方とも好きになっていれば、必然的につながってくるものだと思っています。チャンスやきっかけは、その辺にポンポン転がっていると思うので、まずは自分が持っているものをじっくり見て、好きになるということが一番大事なのではないでしょうか。
小林 よく県外の問屋さんから、「新潟の蔵元はいい酒を造っているのに、宣伝がへただ」と言われます。そういう点からも、コラボ商品に取り組んだことは大きかったです。新潟出身の漫画家さんは全国でもトップクラスと聞きますので、その方々と新潟の技術をコラボすれば、全国、世界に広げていけるチャンスはあると思います。
内田 大事なのは情熱だと思うんですね。こういう商品を作りたい、企画をやりたいという熱意、思いがなければ絶対に相手に届くことはない。形だけのものというのは、すぐに飽きられてしまいますので、思いをしっかり込めるというのが一番大事ではないかと思います。そして、さまざまな分野に視野を広げ、理解をするところから始めれば、いろいろなコラボレーションが決まって、新潟はもっと面白くなっていくのではないでしょうか。
※ホール内に古町5番町各商店の等身大キャラクターパネルを、ホワイエでは県内企業のキャラクター設定商品を展示しました。協力:ふじの井酒造、日本アニメ・マンガ専門学校、(有)マルダイ(三条市)、(株)高口又四郎商店(新潟市北区)


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