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県内の研究者や研究機関紹介

※情報は随時更新していく予定です

長岡技術科学大学 上村靖司教授 雪を利活用し脱炭素化にも貢献

雪を使った可搬型冷房装置

長岡技術科学大学の上村靖司教授は、冷熱エネルギーとしての雪の活用方法を研究しています。雪室での農産物の保存や、雪を使った冷房の実証実験を実施。上村教授は「雪を当たり前に活用する社会になるといいです」と力を込めます。

雪は古くから世界中で冷熱資源として活用され、日本でも雪をわらなどで断熱した穴の中に貯蔵し、病人の熱冷ましなどに使われていたそうです。

上村教授は30年ほど前から雪の利活用について研究。2000年代に入ると、高床式住宅の1階部分を30トンの雪を貯蔵する雪室にし、冷気を送って夏の冷房を賄う実験を行いました。ひと夏の電気代を千円ほどに抑えられましたが、雪を保存するための断熱構造を整備するには高額な費用がかかり、一般家庭には普及しなかったといいます。

「食品や医薬品など、雪を活用できる産業を誘致したい」と語る
上村靖司教授

一方で、雪室は温度と湿度が一定で食品の鮮度保持に適しているほか、イモが甘くなるなど味わいも向上することから企業が注目。コメや日本酒など、雪室で熟成させた商品も増え、お土産などとして人気を集めています。上村教授は「雪が商品に新たな価値をもたらしています」と語ります。また、倉庫を低温に保つために一年中回していたエアコンの電力消費を抑え、CO2削減など環境にも優しい取り組みといえます。

近年は、袋詰めした雪の上に送風機を載せた可搬型の雪冷房の開発にも取り組んでおり、すでに県内外のイベントなどで活用されているそうです。

上村教授は「雪室など産業界で雪の活用が普及すれば、雪の流通が始まり、社会インフラとして整う可能性があります」とし、「電話で注文すれば家庭にも冷房用の雪が運ばれてくる。そんな日がくるといいですね」とほほ笑みました。

「ブルーカーボン」拡大目指す新潟県水産海洋研究所

海藻で二酸化炭素を吸収

収穫した佐渡市黒姫沖のワカメ

海藻が吸収する炭素「ブルーカーボン」の拡大を目指す研究が、県内で進んでいます。関係者は「ブルーカーボンという新しい価値をきっかけに、地球環境に貢献する新しい動きが広がっていくといいです」と期待しています。

ブルーカーボンは海藻などの海洋生物が光合成を通じて取り込んだ二酸化炭素(CO2)由来の炭素を指し、森林などの陸上生態系に比べCO2吸収率が高いのが特徴です。全国的に海藻養殖場の拡大や藻場の造成などが進んでいます。

研究は、新潟県水産海洋研究所(新潟市西区)と国立研究開発法人水産研究・教育機構(横浜市)などが実施。佐渡市北東部の黒姫沖ではアカモクやワカメなどの海藻養殖の拡大技術開発、粟島沿岸では海藻が群生する藻場の回復に取り組んでいます。

海藻の養殖は地元の漁業者が食用よりも大きく育て、CO2を多く吸収させた後に収穫する仕組みです。今季は、ワカメの養殖試験区内で約2.1トンの水揚げがあったそうです。食用以外にも、工業用プラスチックや畜産飼料などの原料としての活用が見込まれています。

失われた海藻を食害防いで再生

粟島の沿岸ではサザエなどの巻き貝による食害を主な原因として、藻場が消える磯焼けが問題となっており、1994年から2012年までに約65パーセントが消失しました。そこで、磯焼け域にとげ付きのネットを設置して食害を防ぐ技術開発や巻き貝の駆除をイベント化させる取り組みを通して藻場の回復を図っています。まずは2ヘクタールを回復させる計画で、最終的には失われた藻場を元に戻したい考えです。

将来的には、CO2吸収量と排出量を取引する「クレジット制度」の活用も期待されています。同研究所増殖環境課の濱岡秀樹主任研究員は「ブルーカーボンを軸にさまざまな産業が結びつき、農林水産業の活性化と環境負荷の軽減が同時に実現できるようにしたい」と話しました。

なお、研究の一部は農林水産省委託プロジェクト研究(JPJ008722)「ブルーカーボンの評価手法及び効率的藻場形成・拡大技術の開発」によって行われたのもです。

磯焼け域に設置した食害防止とげ付きネット
畜産飼料としての活用も見込まれる