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中学生円卓会議

私たちが描く新潟の未来と脱炭素社会

未来のチカラにいがた脱炭素プロジェクトのメイン企画の一つ「中学生円卓会議」が1月、新潟市中央区の新潟日報メディアシップ日報ホールで開かれました。

県内の中学5校の計7チームが参加し、生徒たちは昨秋から出前授業や企業訪問を通じて地元企業や自治体の脱炭素につながる取り組みを学んできました。

円卓会議ではそれぞれ工夫を凝らしたスライドを使い、まとめた内容や感想などを発表。お互いの発表を踏まえて他校の生徒と意見を交わし、交流しました。

円卓会議には訪問先の企業や自治体の担当者もオブザーバーとして駆けつけてくれました。白熱した円卓会議の様子を紹介します。

村上市立朝日中学校CO2を吸収する森林資源の大切さ体感

発表者
筒渕(つつぶち) 陽菜(ひな)志田(しだ) (はるか)(はた) 浩人(ひろと)
オブザーバー
中井 照大郎(GREEN FORESTERS社長)
本間 郁朗(村上市農林水産課)

村上市の朝日中1年生は円卓会議の発表で、地元で盛んな林業が果たす役割について紹介。生徒たちは「世界中で植林などに取り組めば、地球課題を解決できるかもしれない」と発表しました。

生徒たちは昨年11月、植林、育林専門の林業ベンチャーで、朝日地区に拠点を置く「GREEN FORESTERS」(東京)の中井照大郎社長や市の担当者から、森林の役割などを聞いたほか、市内の山間地で杉の植林を体験しました。

植林体験する生徒たち

円卓会議の発表では、古くなった木を伐採して資源にし、新たな木を植えることで常に森林がCO2を吸収できる環境を整えることの必要性を訴えました。また、温室効果ガスの排出削減量を売買する「カーボンクレジット」活用の可能性についても紹介しました。

このほか、写真を交え、植林体験の様子も報告。「森林がCO2を吸収して、地球の危機を救ってほしい」と願いを語りました。さらに、自分たちにできることとして、植林ボランティアや緑化に役立てられる募金への参加を挙げました。

最後に森林のCO2吸収を促すため、「木材を使った製品を増やし、古くなった木を活用してほしい」と来場者に呼び掛けました。

GREEN FORESTERS中井 照大郎さん

植林の大切さを理解してもらえてよかった。
この経験をもとに、脱炭素化を引っ張るリーダーになってもらえたらいい。

関川村立関川中学校再生可能エネルギー導入に期待ふくらむ

発表者
田村(たむら) 色葉(いろは)髙橋(たかはし) 玲那(れいな)渡辺(わたなべ) 伊知子(いちこ)
オブザーバー
大島 祐治、田村 美樹(関川村脱炭素推進室)

関川村の関川中は、1年生33人が、脱炭素の先進的なモデルとして全国で現在74件選ばれている脱炭素先行地域の村の取り組みを学びました。

昨年11月の出前授業では同村脱炭素推進室の担当者が、国の脱炭素先行地域に選ばれた施策について解説。中学校の照明のLED化やスクールバスのEV車への入れ替えのほか、村の豊かな森林資源を活用したバイオマス発電、太陽光、風力、温泉熱(地熱)などさまざまな再生可能エネルギーを導入し、電力の地産地消を目指す計画について理解を深めました。

出前授業後のフィールドワークでは、中学校敷地内の太陽光発電パネルの設置場所を確認。小型風力発電設備の導入に向けて、村内で行われている風力の調査装置などを見学して回りました。

風況調査の現場を訪れた生徒たち

円卓会議では「2年前の集中豪雨では村内に大きな被害があり、昨年は雨が少なく、村で作っているコメの品質が落ちるなどの被害が出ました」と気候変動による身近な影響について報告。村の計画を進めることで、「未来の関川村には、今はないような技術もたくさん増えていってほしい」「関川村の努力で日本や世界にいい影響が出ていってほしいです」と発表しました。

関川村脱炭素推進室田村 美樹さん

生徒たちが自分でできることを考えてくれてうれしかった。
中学生の視点による発表が素晴らしく、大人が学ぶことも多かったです。

新潟明訓中学校水素の活用事例を学んで普及策を提案

発表者
鈴木(すずき) 遥菜(はるな)山田(やまだ) 朱夏(あやか)
オブザーバー
川崎 智尋、橋本 幸音、伊藤 瑠華(青木環境事業)

新潟明訓中2年生は、青木環境事業(新潟市北区)の取り組みを学びました。同社は汚泥やプラスチック、木くずなどの産業廃棄物を県内各地から専用車両で回収し、県内最大級の処理能力を持つ焼却炉で焼却したり、リサイクルしたりしています。

昨年11月の出前授業では、同社社員が焼却炉の熱で発電し、社内で使う電力をまかなっていることを説明。作った電気で水を分解して、次世代エネルギーとして期待される水素を作り、重たい物を運ぶフォークリフトの燃料にしていることも学びました。

昨年12月の同社訪問時には、県内ではまだほとんどない水素ステーションに注目が集まりました。同社社員が「フォークリフトに燃料の水素を入れる時間はわずか3分ほど。それで8時間も作業ができますよ」と説明すると、少し驚いた様子でした。

水素を活用している施設内を回る生徒たち

円卓会議では、社会全体ではまだ水素が活用されていない点に着目。生徒が考えた対策として、「廃業したガソリンスタンドを水素ステーションに利用してはどうか」「新潟はコメづくりが盛んなので、水素で動く農機具を使うのはどうか」「水素はまだ値段が高いので、国や県が補助金を出してほしい」といった提案をし、学んだ成果を披露してくれました。

青木環境事業川崎 智尋さん

中学生が脱炭素について積極的に学んでくれ、関心の高さを感じました。
社会人として多くの気づきを得ることができました。

新潟明訓中学校国境またぐ持続可能な事業展開に共感

発表者
井上(いのうえ) 結斗(ゆいと)関川(せきかわ) 桂鈴(かりん)伊藤(いとう) 萌奈美(もなみ)
オブザーバー
行方 陽介(北越コーポレーション)

製紙大手の北越コーポレーション新潟工場(新潟市東区)を見学した新潟明訓中(同市江南区)の3年生は、円卓会議でバイオマス燃料の利用など、CO2の排出を減らす同社の取り組みを紹介しました。生徒たちは自分たちに何ができるのかについても考え、脱炭素化を進める重要性を訴えました。

生徒たちは昨年12月に同工場を訪れ、木材チップから紙の原料となる木材繊維を作る工程で取り出される黒液(木材の樹脂分)を使ったバイオマス発電について学習しました。

巨大なロール状の紙を見学する生徒たち

発表では、同社が国内外で取り組んでいる植林について「伐採した後に、もう一度植林することで持続可能になっています」と解説しました。黒液については「燃やしても原料になる前の木が吸収したCO2の量で相殺し、排出量を実質ゼロにできます」とメリットを説明。また、太陽光などを活用した自家発電を行っていることも紹介しました。

その上で、「私たちにできることは脱炭素について興味を持つこと」とし、「どう解決できるのかを考えることが大切」と強調。

「エコな商品を選び、身の回りからエコに変えていくことも重要です」と呼びかけました。

北越コーポレーション行方 陽介さん

会社の取り組みから自分たちにできることを考えていて素晴らしいと思いました。
多方面に興味を持ち、環境問題に取り組んでほしいです。

十日町市立吉田中学校地域全体で取り組み進める大切さ学ぶ

発表者
庵原(いはら) 笑琉(にこる)植木(うえき) 詩乃(しの)丸山(まるやま) (りん)
オブザーバー
伊藤 俊(十日町市環境衛生課)
八重沢 みづ穂(吉田中学校)

十日町市の吉田中1年生は、使用済み紙おむつのペレット燃料化や、同市で進む温泉熱など再生可能エネルギーの活用について報告しました。自校の取り組みも紹介し、社会全体で資源の再利用などに取り組む必要性を語りました。

生徒たちは昨年10月、市のごみ焼却施設を訪れ、福祉・保育施設から回収した使用済み紙おむつをペレット燃料化し、福祉施設の給湯熱源になるまでの過程を学習。このほか、一般家庭約280世帯分の発電をしている松之山温泉の温泉熱を使った発電所も見学しました。

温泉熱を活用した発電所を訪れた生徒たち

円卓会議では、大きな紙で作った脱炭素プロジェクトのキャラクター「ダツボン」が、地球温暖化が進んだと想定した2050年の厳しい気象情報をニュース番組形式で解説。ペレット燃料はCO2排出量やごみ処理費削減などのメリットがある一方で、紙おむつペレット燃焼専用のボイラーが必要で設備費がかかることも学びました。

このほか、地元産杉の活用の可能性や、学校行事のフリーマーケットで資源の再利用やごみの削減を進めていることも紹介。「物を作る時に必要性や材料、量を考え、社会全体でごみを減らしていく努力が必要です」と訴えました。

十日町市環境衛生課伊藤 俊さん

人口減など社会の変化とともに脱炭素化の取り組みも変わってくると思います。今後も何ができるのかを考え続けてほしい。

長岡市立南中学校省資源 再エネの可能性への理解深める

発表者
小川(おがわ) 巧人(たくと)山田(やまだ) 雲雀(ひばり)西山(にしやま) 智章(ともあき)
オブザーバー
中山 太(プラントフォーム)
南 祐輔・平野 優歩(長岡市エネルギー政策室)

長岡市のミライエ長岡と植物工場運営のプラントフォームを訪れた南中(同市)の3年生は、太陽光発電の活用や、植物と魚を同時に育てる循環型農法「アクアポニックス」について発表。「省エネなどの取り組みは環境とコストの両面に貢献する」とメリットを強調しました。

生徒たちは昨年10月、ミライエ長岡で市職員から市内で進む太陽光発電設備の実証実験などについて話を聞いたほか、プラントフォームでアクアポニックスの施設を見学しました。

アクアポニックスについて学ぶ生徒たち

円卓会議では、太陽光パネルを縦向きで設置し、雪を積もりにくくするといった雪国ならではの工夫を説明。「環境に優しい」といった太陽光発電のメリットを挙げた一方で、天候に左右されるなど課題も指摘しました。

また、アクアポニックスについて、水を捨てたり換えたりする必要がほとんどなく、農薬と化学肥料も不要のため、「これらを製造する際に発生するCO2が不要になり、さらに節水や生産コスト削減につながる」と解説しました。

こうした取り組みを受け、「個人や企業で脱炭素の活動を行っていくことは、地球や暮らしを守るために欠かせないことだと感じた」とし、「脱炭素を心に留め、日々の生活を送りたい」と発表を締めくくりました。

プラントフォーム中山 太さん

買い物ではエコな商品を選ぶなど、今回学んだことを生かして、日々の生活でアクションを起こしてもらえたらうれしいです。

長岡市立南中学校身近なグローバル企業の活動誇らしく

発表者
玉井(たまい) 奏向(かなた)伊藤(いとう) (はる)(あき)霜鳥(しもとり) 聡太(そうた)
オブザーバー
上田 賢治・丸田 妙・永井 克典(INPEX)

昨年10月、長岡市越路地域にあるINPEX越路原プラントを訪れた南中(同市)の3年生3人は、市内をはじめ国内外で石油や天然ガスの開発、生産などを行っているグローバル企業の最先端の動きについて学びました。

同市と小千谷市にまたがる地下には、国内最大級のガス層が広がっています。そこから天然ガスなどを採取している越路原プラントについて、「近くにあるのに初めて来ました」と話す生徒たち。長岡で採取されるものを含め、天然ガスは全長約1500キロのパイプラインで首都圏や富山県、静岡県などに送られており、長岡が日本のエネルギー拠点の一つであることを肌で感じ取っていました。

メタネーション施設の建設現場を訪れた生徒たち

脱炭素につながる施策として、越路原プラントの敷地のすぐ隣では、回収した二酸化炭素(CO2)を使って天然ガスの主成分である合成メタンを作るメタネーション施設が建設中でした。柏崎市ではCO2から次世代エネルギーの水素やアンモニアを作る計画が進んでいることも、座学で学びました。

生徒たちは地元にある企業の先進的な取り組みを知り、「素晴らしい企業が長岡にあることが誇らしく感じた」と強く印象に残った様子。 円卓会議では「長岡が脱炭素の拠点になり、世界からも注目されるようになったらうれしい」と未来に期待する感想を発表してくれました。

INPEX上田 賢治さん

素晴らしい発表で、中学生の真剣な姿に刺激を受けました。
われわれも会社でできる取り組みをしっかりと進めていきたいです。

他校の発表踏まえ意見交わし交流

生徒たちは各チームの発表後、ディスカッションで「脱炭素社会に向けて私たちができること」をテーマに意見を交わしました。

「2050年にカーボンニュートラルを実現するには何が必要か」との問いに対しては、「興味関心を持って脱炭素について知ることが必要」「(節電やエコな商品の購入など)身近なところから行動したい」といった意見が出ました。

脱炭素に対する認知度の低さを課題に挙げる声もあり、「脱炭素の活動を全国に広げ、多くの人に参加してもらうことが大切」「今日の発表のように発信することが大切」といった発言がありました。

ディスカッション後、生徒代表5人が「脱炭素宣言」としてまとめたメッセージを発信。「地球温暖化を自分事としてとらえ、身近なできる対策をみんなで進めよう」と宣言文を読み上げ、2050年の脱炭素社会の実現に向けて決意を新たにしました。

講評:興味持ち学び続けよう

新潟大学工学部 増田 淳教授

各チームとも中学生の視点で脱炭素についてよく調べ、考え、分析しており、大変興味深い発表でした。

同時に、脱炭素については再生可能エネルギーを作るだけでなく、省エネや電気を蓄電池でためることなども大切です。ものごとの全体を見て、総合的な視点から考えるようにすると、さらに素晴らしいと思います。

円卓会議の参加者では、女子生徒の姿も多かったようです。男女を問わず、理系の分野に関心を持ってくれたら、さらにうれしいです。今後も興味を持ち続け、学びを続けていってほしいと期待します。

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