- リレーコラム
脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。
県内の理工系6大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎週木曜日夕に配信=第5週がある場合は休み)
リレーコラムVOL.16
三菱ガス化学株式会社
執行役員 グリーン・エネルギー&ケミカル事業部門 GEC推進室長
橋本 晃男
1964年、長岡市出身。1989年に三菱ガス化学入社。研究所にて分析、プロセス開発、触媒開発に従事した後、工場製造部門長、本社環境安全品質保証部長、CSR推進室長、新潟工場長を歴任。2024年4月から現職に就き、カーボンニュートラルテーマの統括推進業務に従事。

化学会社の脱炭素に向けた取り組み
化学会社の責任と使命
「石器時代が終わったのは、石がなくなったからではない」。これは1980年前後にサウジアラビアの石油相だった故ヤマニ氏が産油国の強気な姿勢を戒めた言葉ですが、半世紀を経て「石」を「化石資源」に読み替えたこの言葉の答えを我々は懸命に探っています。
これまで化学会社は化石資源(石炭、石油、天然ガスなど) を原料に、それを化学反応により有用な化学製品(プラスチック、繊維、ゴム、溶剤、医薬品など)に転換し人々の生活を豊かなものにしてきました。その結果、地中に閉じ込められていた炭素を二酸化炭素(CO2)の形で大気に放出し、地球規模の気候変動を引き起こしています。

ただ現代社会において化学製品は無くてはならないものであり、それらが無い世界は想像できません。これからの化学会社は化石原料への過度な依存をやめて、大気中のCO2を増やさずに(つまり脱炭素を図りつつ)化学製品を製造する炭素循環の仕組みを構築していかねばなりません。そして、それに貢献する技術と社会システムの開発が求められています。例えば、悪者のCO2は見方を変えれば重要な炭素源です。それを化学の力で有用な物質に変換し再利用する(CCU:Carbon dioxide Capture & Utilization)、これこそ化学会社の腕の見せ所なのです。


三菱ガス化学の脱炭素への取り組み
三菱ガス化学はこの使命のもと2050年カーボンニュートラル達成を目指して様々な取り組みを行っています。その達成に向けてはこれを一つだけやれば大丈夫、というものは残念ながらありません。多くの技術やアプローチを駆使し多層的に取り組む必要があります。
当社は本業である化学合成技術を生かし、先述のCO2から価値ある物質を産み出す取り組みとして、CO2から基礎化学物質のメタノールやポリカーボネート樹脂を製造する技術開発を進めています。また脱炭素燃料として期待の高い水素やアンモニアは当社で製造してきた歴史もあり、クリーン水素、アンモニアの供給体制の整備も進めています。更にはエネルギー資源・環境事業にも携わっていることを強みにCCS(Carbon dioxide Capture & Storage:二酸化炭素の地下貯留)の開発、また地熱発電や高効率LNG発電などの脱炭素に資するエネルギー事業にも取り組んでいます。

当社は、化学メーカーの強みを生かしつつこれら多層的な脱炭素への取り組みを通じて地球環境にポジティブなインパクトをもたらす変革者となることを目指し、またカーボンニュートラルの達成過程で得られる技術や製品を社会と分かち合い、炭素循環社会の構築に貢献していきたいと考えています。
最後に、当社は新潟市北区の阿賀野川河口に国内最大の工場である新潟工場を持っています。この工場は東新潟油ガス田なども活用する数々の脱炭素技術基盤を持つことから、脱炭素のフラッグシップ工場として、2021年から様々な脱炭素アイテムの実装を進めています。こちらは、次にリレーする工場のメンバーから詳しく紹介しますので是非お読みください(次回4月24日、次々回7月17日の予定です)。

