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  • リレーコラム

脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。

県内の理工系6大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎週木曜日夕に配信=第5週がある場合は休み)

リレーコラムVOL.20

東北電力株式会社
執行役員 東新潟火力発電所長 兼 新潟火力発電所長
清野 幸典せいの ゆきのり

1966年、宮城県出身。山形大学大学院 精密工学科 精密工学専攻修了。
2018年 発電・販売カンパニー火力部副部長、2021年 能代火力発電所長、2023年7月より現職。

国内初の発電技術が新潟県聖籠町からスタートしたってホント?

東北電力・東新潟火力発電所の概要

東北電力東新潟火力発電所(北蒲原郡聖籠町)は新潟市から北東に約25km、新潟東港工業地帯の一角に立地しています。聖籠町はサクランボや梨、ぶどうなどの果樹栽培が盛んで、夏場には海水浴客でも大変賑わう自然豊かな地域です。

東新潟火力発電所は1号機、2号機、3号系列、4号系列の4つの設備によって構成された発電所です。それぞれ、号機・系列順に運転を開始し、国内初となる新たな技術(後述)を取り入れた3号系列は2024年に運転開始から40年の節目を迎えています。

4つの設備を合わせた総出力416万kWは国内の火力発電の出力としては第4位(2025年1月時点)となる大変大きな規模となります。

燃料は地球温暖化の原因の一つとされるCO2(二酸化炭素)の排出量が石油・石炭等と比較して少ないLNG(液化天然ガス)を使用しています。

東新潟火力発電所(3号系列は3-1号系列、3-2号系列、4号系列は4-1号系列、4-2号系列で構成されている)

国内初の技術が生まれた40年の歩み

東新潟火力発電所3号系列は、1980年代において、近代化による電力需要の増加が予想されることなどから、その建設が計画されました。3号系列は当初、重油・LNG混焼の従来型火力発電方式(※1)として計画されていたものの、脱石油・省エネルギーという国家的課題に対応するため第4代目社長の英断により、当社は日本で初めてとなる「大容量コンバインドサイクル発電方式(※2)」を導入しました。そのため、ここ新潟県聖籠町は、「大容量コンバインドサイクル発電方式」発祥の地となります。

このコンバインドサイクル発電方式は、従来方式と比較して発電効率が高く、少ない燃料で発電することができるため、その後のLNGを燃料とする火力発電のスタンダードとなっており、火力発電所の高効率化の原点、環境負荷低減の礎となった技術ともいえます。当社においては、本方式の導入からさらなる発電効率の向上に向けて挑戦を続け、2022年に運転を開始した『上越火力発電所1号機』では、当時世界最高の発電効率を達成しています。

(※1)従来型の火力発電方式は、ボイラで燃料を燃焼し、その熱で蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転させることで、直結した発電機が回転し、発電します。

(※2)コンバインドサイクル発電方式では、ボイラに代わって、ガスタービンで燃料を燃焼することでガスタービンが回転し、直結した発電機が回転することで、1度目の発電を行います。さらに、ガスタービンで燃焼された排ガスは、600℃程度の高温であることから、その排ガスを排熱回収ボイラに導き、その熱で蒸気を発生させ、蒸気タービンおよび発電機を回転させることで2度目の発電を行います。

従来型火力発電方式イメージ図
コンバインドサイクル発電方式イメージ図

火力発電は電力のバランス名人

一般家庭、工場や学校などでの電気の使用量を総合的にみると、電気の使用量は朝から日中帯にかけて増加し、夜に向けて減少していきます。

一方、再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電は季節や天候によって発電量が変化します。電気の「使用量」と「発電量」が同じ時に同じ量でないと電気の質(周波数)が乱れ、電気を正常に供給できなくなり停電する可能性があるため、「使用量」と「発電量」は常にバランスを保つ必要があります。

このバランス役を担うのが火力発電であり、特にコンバインドサイクル発電方式は、発電量の増減を行う「調整力」に優れた発電方法です。太陽光発電や風力発電の発電量は自然条件によって刻々と変化しますが、その発電量の増減に合わせ火力発電の出力をコントロールし、昼夜発電量を調整しながら質の安定した電気をお届けしています。また、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーのさらなる導入拡大に向け、火力発電には今後、その調整力としての役割がますます期待されています。

電力需要曲線図
電力バランスイメージ図

新潟火力発電所5号系列にて国内初の水素混焼試験を実施

電力のバランス役を担う火力発電ですが、脱炭素の取り組みも重要です。

現在、国内の発電量の約7割を占めているのが火力発電です。その脱炭素の取り組みのひとつが、燃料に水素を混ぜて発電する「水素混焼」です。2022年より東新潟火力発電所と一体となって運用している新潟火力発電所(新潟市東区)では、2023年に事業用ガスタービンコンバインドサイクル発電設備としては国内初(※3)となる水素混焼試験を行いました。2024年には水素混焼の比率を高めた試験も行っています。水素は燃焼時にCO2(二酸化炭素)を排出しないことからカーボンニュートラル燃料として注目されています。今後は、試験で得られた知見を活かして脱炭素化に貢献していくほか、カーボンニュートラル燃料の活用に向けて、サプライチェーン(供給体制)が未確立という課題について、社会全体で考えていく必要があります。

(※3)2023年10月18日時点 当社調べ

新潟火力発電所(5号系列は5-1号、5-2号で構成されている)
水素混焼イメージ図
水素混焼試験の様子

東新潟火力発電所1・2号機のコンバインドサイクル発電方式へのリプレース(更新)を計画

東新潟火力発電所1・2号機は運転開始から40年以上経過したことなどから、よりCO2の排出量が少ない最新鋭の高効率コンバインドサイクル発電設備へのリプレース(更新)を計画しています。リプレース後の発電設備では、将来的にカーボンニュートラル燃料(水素/アンモニア)を活用することも検討しています。

新潟県で生まれた技術を将来に向けて

1984年の東新潟火力発電所3-1号系列で採用した大容量コンバインドサイクル発電方式は運転開始から40年が経過しました。新潟県で生まれ、絶え間ない技術開発により進歩をとげてきた本技術は、これからも継承と進化を続け、脱炭素化に向けて発展してまいります。

当社火力発電所の高効率化の推移
リプレース前
リプレース後(イメージ図)

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