- 紙面シリーズ
「移動」って、
脱炭素できないの?
日常生活の中から排出される二酸化炭素(CO2)のうち、通勤通学や買い物、旅行などの「移動」に伴う排出量が約2割を占めています。未来のチカラにいがた脱炭素プロジェクト9月特集は「移動」に焦点を当て、公共交通機関の利用や、電気自動車(EV)や電動アシスト付き自転車などを活用することで、CO2を削減する「スマートムーブ」の取り組みを紹介します。
県内でEVバス・タクシー快走中!
CO2削減効果に期待
新潟交通(新潟市中央区)はこの春、JR新潟駅と新潟空港を結ぶリムジンバスとして電気バス(EVバス)の運行を開始しました。走行中にCO2を排出しないだけでなく、モーター駆動で騒音が少ないなど、環境にも乗客にも優しい運行を実現しています。
EVバスは国の補助制度を活用し、県と新潟市の脱炭素事業の一環で導入。フル充電で220㌔以上の走行が可能で、1回の充電で1日運行ができます。
外装は空や環境をイメージした青を基調とするなど、「脱炭素に取り組む意識」を持ってもらえるようなデザインにしたそうです。実際にEVバスに乗ってみると、変速ギアがないため、滑らかな乗り心地です。
EVバスの導入により1台で年間約14㌧のCO2削減効果(3~4世帯分の年間CO2排出量に相当)が見込まれます。
現在6台あるリムジンバスのうち2台をEVバスで運行しており、本年度中にさらに2台を更新予定で、同社乗合バス部企画調整課の上田陽香さんは「EVバスをきっかけに、自家用車も含め環境に優しい車を使う意識を高めてもらえたらうれしいです」と期待します。
生活支える路線バスにも
長岡市では越後交通(同市)の路線バスでEVバスを運行しています。県内の路線バスでは初めてで、費用の一部は同市と国が支援しました。1台で月約3㌧のCO2削減効果が見込まれるそうです。
動力がモーターのためギアチェンジが不要で加速も早く、とても運転しやすいそうです。
EVバスは防災面での活用も期待されています。長岡市では過去の震災や豪雪でライフラインの復旧に時間を要した経験も踏まえ、EVバスを非常用電源として活用する協定を同社と結んでいます。
タクシー業界も導入の動き
新潟第一交通(新潟市西区)は県の補助を受けて今春からEVタクシー3台を導入。同社を含め九州に本社を置く第一交通産業グループ全体では、計約100台を本格運用させています。同グループでは約7割のCO2削減効果を見込んでいます。
山﨑啓樹社長は「今後もさらにEVタクシーを導入し、脱炭素化やSDGsにつながる取り組みを進めていきたい」と話しています。県は本年度もタクシーのEV車導入を補助する事業を行っています。
EV車の普及には充電設備の整備も欠かせませんが、国は従来目標を倍増させ、2030年までに全国30万口設置する方針を示しています。技術革新により、バッテリー性能の一層の向上や価格低減も期待されます。皆さんもバスやタクシーなど身近な公共交通機関で、乗り心地を体験してみませんか。
EVをみんなでシェア
国の脱炭素先行地域に選ばれている佐渡市。持続可能な地域づくりを進めようと、電気自動車(EV)の導入を積極的に進めています。
両津港に近い佐渡市役所両津支所に今夏、カーシェア車両としてEV2台が配備されました。市民や観光客、市職員が活用しています。
市民や観光客が使用する場合は、会員登録をしてネットで予約。運転免許証でドアロックを解除して車中にある鍵を取り出して使う仕組みになっています。平日は市職員や市民、週末は多くの観光客に利用されています。
同市総合政策課の北見航希さんは「市民や観光客とカーシェアすることで、車を有効利用できています。EVの普及に今後も取り組んでいきます」とPRしています。
地元レンタカー業者でもEV導入が進んでいます。同市では公共施設や宿泊施設など、島内に広くEV充電設備を導入する計画を進めており、市内全域でEVの普及を後押ししています。
電動アシスト付き自転車で環境にも優しく
豊かな自然に恵まれた妙高市は県内外から多くの観光客が訪れる妙高高原エリアで昨年から、電動アシスト付き自転車を貸し出す取り組みを始めました。
従来は市営バスや自家用車での移動が中心でしたが、高低差のあるエリアを容易に移動でき、脱炭素化にもつながる2次交通として電動アシスト付き自転車を導入し、妙高市の魅力アップに一役買っています。
運営は一般社団法人「妙高ツーリズムマネジメント」に委託。妙高高原駅に隣接する観光案内所など4カ所の駐輪場に、計25台を設置しています。
全車が貸し出しされる日もあり観光客に好評です。今月中にも駐輪場を1カ所増設予定で、同法人の閏間嘉昭さんは「環境に優しい自転車の利用が、豊かな自然を守ることにつながったらうれしいです」と話します。