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新潟発で新技術、
奥が深いぞ脱炭素

第6話

2050年の脱炭素社会の実現に向けて、水素などの次世代エネルギーの製造や、電気を効率良く使う研究が県内で進んでいます。新しい技術の開発には、産学官の連携も欠かせません。12月の脱炭素特集紙面は「研究」をテーマに、県内大学での注目の研究事例や、間もなくオープンする研究の拠点施設を紹介します。

世界が注目 グリーン水素 新潟大学 児玉竜也教授

水素は燃焼させても二酸化炭素(CO2)を出さず、石油などの化石燃料に代わる次世代のエネルギーとして注目されています。

太陽光や風力など再生可能エネルギーを使って作る水素はCO2を出さず、「グリーン水素」と呼ばれています。このグリーン水素を作る研究で海外からも注目されているのが、新潟大学工学部の児玉竜也教授です。

太陽熱で水を分解して水素に

児玉教授は太陽光をたくさんの鏡で反射させて一点に集め、水を1000度を超える高温にして分解し、水素を作る研究をしています。「太陽の熱と水で作る水素は、CO2を出さないクリーンエネルギーで脱炭素社会を作っていくためにとても重要だと考えています」と力を込めます。

実験は年間日射量が多い宮崎県や、「サンベルト」と呼ばれる地域にある南半球のオーストラリアで行われています。

児玉教授は、水を分解する装置や、効率良く水を分解するための反応を速くする触媒も独自に開発してきました。実験が進むにつれ、効率良く水素を作ることができるようになってきており、課題とされるコストの削減にも期待が寄せられています。

グリーン水素の研究に取り組む児玉竜也教授

新潟を次世代エネルギーの拠点に

実験が実用化されれば、海外で大量に安く作った水素を新潟の港まで船で運び、すでにあるパイプラインを活用し首都圏などに送る時代が来るかもしれません。児玉教授は「新潟が次世代エネルギーの拠点になり、発展につながる可能性があります」と指摘します。

また、新潟大学には昨年、脱炭素に関する研究拠点となる「カーボンニュートラル融合技術研究センター」が開設されました。児玉教授がセンター長を務めており、国内外の研究者、民間企業とも連携していく構想を描いています。児玉教授は「センターから脱炭素の新しい技術を生み出していきたい」と意気込んでいます。

大学の実験室には巨大な実験設備の模型も展示されている

社会変える パワエレの技術 長岡技術科学大学 伊東淳一教授

パワーエレクトロニクス(パワエレ)は電気をあやつって、効率や性能を良くする技術のことです。長岡技術科学大学はパワエレの国内最大級の研究拠点で、六つの研究室があり、各研究室を率いる教授以下、計100人を超える学生が日夜、電気自動車(EV車)やロボットなどに関連するさまざまな研究に励んでいます。

充電器のサイズとコストが半分に

その中の一人、伊東淳一教授は、小さいサイズで低コストのEV車向けの充電技術を共同開発し、すでに国内の自動車メーカーの充電器にその技術が使われています。

電気は流れが一定方向の直流と、定期的に流れが反対になる交流の2種類あります。EV車に搭載しているバッテリーは直流ですが、充電器から流す電気は交流です。

そのため、バッテリーに充電するには電気を交流から直流に切り替える必要があります。伊東教授は切り替える回路を組み替えることで充電器の小型化、高効率化を実現。充電器のサイズとコストを、従来の半分にすることができました。

「充電器の価格破壊でした。国内外で自分が開発した技術を使った充電器を見ると、とても誇らしいです」と伊東教授。

測定器が並ぶ中で研究に励む伊東淳一教授

電気を上手に、より効率良く使う

パワエレの技術は多くの製品に用いられています。例えば携帯電話のバッテリーが長持ちするようになるのは、パワエレの技術が使われているからだそうです。

脱炭素社会の実現に向け、太陽光発電や風力発電などが各地で導入されています。同時に、作った電気をより上手に、より効率良く使うため、パワエレの技術が欠かせません。

伊東教授は国内外の企業約20社と連携し、パワエレの研究に励んでいます。パワエレの技術は私たちの生活を便利にしてくれています。伊東教授は「今後も研究を重ね、脱炭素社会の実現をサポートしていきたいですね」と話しています。

学生にアドバイスする伊東教授

胎内に産学官連携の新拠点 中条共創の森オープンイノベーションラボ NOiL

JX石油開発(東京)は、胎内市にある中条油業所の敷地内に、産学官が連携して脱炭素につながる新しい技術などを生み出すための拠点施設「中条共創の森オープンイノベーションラボNOiL(ノイル)」を整備し、同ラボが入る事務所について2024年春のオープンを目指しています。

この建物は主に行政機関や企業、教育機関との研究や交流の場と考えており、木造平屋建てで、会議室や応接室のほか、オープンスペースや足湯も楽しめる設備もできる予定です。屋根には太陽光発電設備を導入し使用電力に充てます。

同ラボでは県内の大学や国内外の企業とも連携し、CO2を地下に貯留する技術や水素を作る研究などを進める計画です。同ラボ所長で、JX石油開発サステナブル事業推進部の門澤伸昭さんは「長年事業を行ってきた胎内市から脱炭素につながるイノベーションを起こしたい」と話しています。

太陽光発電設備を導入するなどし建物のエネルギー収支をゼロにするよう設計されているノイルの外観イメージ

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