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脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者たちが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。

新潟大や長岡技術科学大など理工系6大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(第1、3木曜日夕に配信)

リレーコラムVOL.7

JX石油開発株式会社 サステナブル事業推進部
中条共創の森オープンイノベーションラボ 所長
石川 充子いしかわ みちこ

証券会社、商社系ベンチャーを経て、2011年よりJX石油開発(株)に入社。米州地域の原油・ガスプロジェクトの事業管理、企画部、ENEOSホールディングスに出向。カーボン・オフセットサービスの実証等、環境事業の企画・立案に従事。2024年9月から現職。

胎内市に脱炭素事業の新拠点を開設 中条共創の森オープンイノベーションラボ

当社は、ENEOSグループの主要な事業会社として、2050 年のカーボンニュートラル社会実現に貢献するため、石油・天然ガスの開発事業を基盤としつつも、長年培ってきた地下技術を活かし、CCS(CO2を地下に圧入する技術)/CCUS(CO2を地下に圧入しつつ、利活用する技術)を中心とした脱炭素事業(当社では環境対応型事業と呼んでいます)をこれからの成長事業とする、二軸経営を推し進めています。その意思表示も込めて、2025年1月1日には「ENEOS Xplora」に社名を変更し、石油・天然ガスに留まらず、この星を未来に繋ぐさまざまな事業に挑戦していく考えです。

世界に先駆けた環境事業への挑戦

さて、これまで石油・天然ガスの開発・生産事業を推進し、環境対応型事業になじみがないように思われる当社ですが、実は、長年にわたり世界でも先進的なCO2削減に取り組んでまいりました(図1)。例えば、原油を生産した際に発生するガスについて、当時はその場で焼却処分しておりましたが、中東では初めて、これらを地下に貯留することで焼却を行わないクリーンな石油生産を実施しています。また、2007年にはベトナムの油田施設において、炭素クレジットの先駆けであるCDM(クリーン開発メカニズム)を資源開発業界では世界初となる承認を受けました。さらに、2017年にはアメリカのテキサス州で、CO2を回収し、古くなった油田に圧入しつつ、原油の回収量を増やすというPetra Nova CCUSプロジェクトを開始。これにより、国内の事業者としては唯一、CCS/CCUSの商業化に成功しているほか、この事業は年間140万トンのCO2を回収する世界最大規模のCCUSプロジェクトとなっています。このように、世界や業界に先駆けて取り組んできた技術や知見が当社の大きな強みとなっております。

図1:脱炭素分野における当社のこれまでの取り組み

新潟における新たな挑戦

当社の国内唯一の天然ガス・原油の生産拠点である「中条油業所」は、新潟市から北東へ約40km、美しい松林の広がる胎内市の海岸沿いに位置しております。新潟県は古くから石油、天然ガスが豊富な地域であり、中条油業所が操業を行う中条油・ガス田は、1957年に発見され、これまで67年間、安定して操業を継続し、地域のみなさまにエネルギーを供給してまいりました。

こうした中、長年の操業を通して築いた地域のみなさまとのネットワークを生かしつつ、環境対応型事業の推進を加速させるため、2022年4月に油業所内に「中条共創の森オープンイノベーションラボ(Nakajo Open-innovation Lab、以下「NOiL」)」を開設しました(写真1)。

写真1:松林と調和したデザインのNOiL事務所と担当社員ら。

NOiLは、いわゆる実験室ではなく、コミュニケーションを通じて新たなアイデアを創出する場を目的として設立されました。NOiLの事務所は、本年6月に完成したばかりですが、特徴は、「高い意匠性」と「最高レベルの超エコ建築」です。共創の場にふさわしく、コミュニケーションが取り易くなるよう、工夫を凝らした空間が広がっています(図2、3)。名物である足湯もその一つです(写真2)。

図2:NOiL事務所外観
図3:NOiL事務所内の様子
写真2:皆さまから好評の足湯

こうした高い機能性だけでなく、太陽光、風力および地中熱を活用することで、事務所内で使用するエネルギーのほとんどを自然エネルギーでまかない、パッシブハウス・ZEB認証基準に対応するなど、環境負荷の低さも兼ね備えています。地中熱の導入に際しては、「新潟県地中熱利用促進協議会」のご支援を頂戴した上で、「令和5年度 新潟県再生可能エネルギー設備導入促進事業補助金」を活用しました(図4)。

図4:NOiL事務所の再生可能エネルギー設備

NOiLは、革新的技術や事業ノウハウの早期獲得を通して、新潟県におけるカーボンニュートラル化への貢献を図ることを目指しております(図5)。当社がリードする、革新的技術の実証に加え、大学、環境先進企業、ベンチャー企業、行政等への技術実証機会の提供および地域社会との連携・共生を通し、胎内市、ひいては新潟県全体の活性化を図っていけるよう、さまざまな事業検討を進めてまいります。

図5:NOiLが目指す地域と連携した環境対応型事業構想図

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