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  • リレーコラム

脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。

県内の理工系6大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎週木曜日夕に配信=第5週がある場合は休み)

リレーコラムVOL.14

石油資源開発株式会社(JAPEX) 国内カーボンニュートラル事業本部 事業二部 部長
松野 郁右まつの ゆう

1974年、大阪府出身。2000年に石油資源開発(株)に入社。20年以上にわたり、新潟県をはじめとした国内外のフィールドで石油・天然ガスの開発に携わる。2023年4月から現職。

地球温暖化対策の切り札! 二酸化炭素を閉じ込めろ

大気中に存在する二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化は、1980年代後半から人類共通の問題として広く認識されるようになりました。そして1992年、温室効果ガスの大気中濃度を安定化させて気候を保護し、自然の生態系などに悪影響を及ぼさないようにすることを目指して、国連総会でいわゆる地球温暖化防止条約(気候変動に関する国際連合枠組み条約)が採択されました。その後も地球温暖化の具体的な対策は国際的に活発に議論され、1997年の京都議定書や2015年のパリ協定を経て、2020年には日本も2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを菅義偉首相(当時)が宣言しました。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出と吸収が均衡して実質的に排出量がゼロになる状態を指し、そのような社会を脱炭素社会と呼びます。温室効果ガスの中でも二酸化炭素は温室効果への寄与が最も大きいため、その排出量の削減が特に注目されています。日本では年間約11.3億トン(2022年)の温室効果ガスを産業や家庭から排出し、0.5億トンを森林などで吸収しています。このため、差し引きで約10.8億トンが排出されていますが、これを2050年までに差し引きゼロ、すなわちカーボンニュートラルを達成することが大きな目標となっており、国際社会との約束にもなっています。

カーボンニュートラルの概念図(JAPEX作成)

しかし、カーボンニュートラルの実現は、何か夢のような技術があれば一気に解決するという簡単なものではありません。温室効果ガスの排出量を減らすには、石油や天然ガスなどの燃料を電気に置き換えたり、省エネを進めたり、再生可能エネルギーを増やしたり、一人ひとりが生活習慣を見直したりして、あらゆる手段を尽くすことが必要です。社会を支える上で重要な製鉄やセメントなど、どうしても温室効果ガスの排出をゼロにできない産業分野もありますし、全ての電力を再生可能エネルギーで賄うことも現実的ではないため、排出量を完全にゼロにすることは難しいです。そこで、世界的に注目を集めているのが、CCS(二酸化炭素の地中貯留)と呼ばれる技術です。

CCSとは、石油・天然ガスの開発で用いられる技術を応用したもので、通常は大気中に放散する二酸化炭素を分離して回収し、パイプラインなどで一か所に集め、地下1,000mを超える深い地中に閉じ込める技術です。JAPEXは、長年培ってきた石油・天然ガス開発の技術を活かして、CCSを通じたカーボンニュートラルへ貢献することを企業としての社会的責務と考えています。国内では北海道苫小牧市と新潟市の二か所でCCS事業に取り組んでおり、政府をはじめ各自治体や地元の方々と連携し、脱炭素社会の実現を目指しています。

CCSについての詳しいことは、次回(4月10日配信予定)ご紹介したいと思います。

CCSの流れ(JAPEX作成)
CCSの概念図(JAPEX作成)

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