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中学生円卓会議

私たちが描く新潟の未来と脱炭素社会

にいがた脱炭素プロジェクト「中学生円卓会議」が2月9日、新潟市中央区の新潟日報メディアシップ日報ホールで開かれました。県内の5中学校が参加し、昨年10月から12月にかけて講義や企業見学を通じ、地域の脱炭素への取り組みを学びました。円卓会議では、訪問先の企業や自治体の担当者がオブザーバーとして見守る中、生徒たちは学んだ成果を発表し、意見交換をしました。円卓会議の様子を紹介します。

胎内市立中条中学校最新技術と再エネの可能性 理解深める

発表者
相沢(あいざわ) 美稀(みつき)野沢(のざわ) 怜太郞(りょうたろう)阿部(あべ) 尚翔(ひさと)
オブザーバー
石川 充子・小久保 晋一(ENEOS Xplora)
井川 智徳(胎内市市民生活課)

胎内市の中条中3年生は、同市内で計画が進む洋上風力発電と、ENEOS Xplora(エネオス エクスプローラ)の取り組みについて報告しました。

洋上風力発電について、胎内市では適度な風が吹き、遠浅の海が広がっていることから、導入に向けて計画が進んでおり、2029年6月に稼働される予定となっていることを報告しました。

ENEOS Xplora中条事業所内を
見学する生徒たち

また、ENEOS Xploraにおいて、排出する二酸化炭素を回収して地中に取り込み、地下深くに閉じ込めてしまう技術(CCS)と、その二酸化炭素を油田に送り、油田の動きを活発化して増産を図るという技術(CCUS)について学んだことを発表しました。昨年11月には、再生可能エネルギーで電力を賄う事務所「中条共創の森オープンイノベーションラボ」を訪ねました。地域密着で環境に配慮したまちづくりを目指す姿を見た生徒たちは「二酸化炭素を減らす努力と未来への挑戦が素晴らしい」と円卓会議で感想を述べていました。

生徒たちはSDGsの学習を踏まえ「『私たちには、社会を変え世界を変える力がある』を信じてこれからも取り組んでいきたい」と決意を述べました。

ENEOS Xplora石川 充子さん

素晴らしい発表でした。節電や食品ロス削減に加え、皆さんが消費者としてエコな商品を選ぶと、その行動が企業を動かし、社会を変えていくことになりますね。

阿賀野市立安田中学校再エネ支える企業の活動に共感

発表者
五十嵐(いからし) (たすく)鈴木(すずき) 結月(ゆづき)山際(やまぎわ) 夕華(ゆうか)
オブザーバー
渡辺 友則(サカタ製作所)

阿賀野市の安田中1年生は、県営の新潟東部太陽光発電所(同市かがやき)で使用されるソーラーパネル取り付け金具を製造するサカタ製作所(本社・長岡市)阿賀野工場の脱炭素への取り組みを報告しました。

生徒たちは、昨年11月に同社社員と県担当者の出前授業を受けた後、阿賀野工場などを見学。製造する取り付け金具の製造ラインや二酸化炭素(CO2)排出削減への工場内の取り組みなどを見て回りました。

展示コーナーで太陽光パネル取り付け金具に
直接触れる生徒たち

円卓会議では、サカタ製作所が台風や雪に耐えられるソーラーパネル用の取り付け金具を、20年前に他社に先駆けて商品化したことを紹介。「全国の空港やショッピングセンター、スタジアムなどさまざまな施設を支えている。全国の展示会場や海外の工場倉庫などでもサカタ製作所の金具が使われている」と解説しました。

さらに、工場内ではLED照明を使ったり、CO2排出量が少ない貨物列車などの輸送を利用するモーダルシフトに取り組んだりしていることを説明した上で、「脱炭素社会実現に向けて、企業だけが行動するのではなく、私たちにできることを探してみましょう」と呼びかけました。

サカタ製作所渡辺 友則さん

サカタの取り組みをわかりやすく発表してくれたのでとても感激しました。
今回の学びを家庭や地域で話してください。
みなさんの知識に驚いた大人たちは、脱炭素にもっと取り組むはずです。

新潟市立臼井中学校CO2削減に燃料電池が貢献 普及に期待膨らむ

発表者
小林(こばやし) 零旺(れお)五幣(ごへい) 幸輝(こうき)田辺(たなべ) 心花(ここは)水沢(みずさわ) 椿(つばき)
オブザーバー
小田川 健一・川崎 耕太(ダイニチ工業)

新潟市南区の臼井中2年生は、二酸化炭素(CO2)の排出を抑えられる家庭用燃料電池「エネファームミニ」の燃料電池ユニットを共同開発し受託生産する、ダイニチ工業(同区)の取り組みを紹介しました。

昨年10月に同社社員の出前授業で、水素と酸素を化学反応させて電気を作る燃料電池の仕組みを、実験キットを使って学んだ上で、翌11月に同社の製造現場を見学しました。

屋外に設置されたエネファームミニ
耐久試験機の説明を聞く生徒たち

円卓会議では、脱炭素に貢献できる再生可能エネルギーの一つに、燃料電池で利用される水素発電があることを紹介。「発電時には電気の他に水が出るだけなので、地球温暖化の原因になるCO2などを出さない」と解説しました。

さらに、エネファームミニの利用で、木70本の年間CO2吸収量に相当する年間1トンを削減できると説明し「燃料電池の普及はCO2排出量を削減でき、脱炭素に貢献することができる」と強調しました。

最後に学習を通じて「脱炭素を考えるきっかけになってよかった」「脱炭素に向けて協力していきたい」とそれぞれの感想を述べ、発表を締めくくりました。

  • 「エネファーム」は、東京ガス株式会社、大阪ガス株式会社、ENEOS株式会社の登録商標です。

ダイニチ工業川崎 耕太さん

皆さん落ち着いていてとてもよい発表でした。
目まぐるしく環境は変わっていきますが、一緒に脱炭素に向けた取り組みを続けていきましょう。

燕市立吉田中学校世界で役立つ技術 誇らしく

発表者
治田(はった) 優月(ゆづき)五十嵐(いからし) 太生(たいしょう)宮路(みやじ) 悠晴(ゆうせい)
オブザーバー
渡邉 桂三(ツインバード)
大森 亨(燕市教育委員会)

燕市の吉田中1年生は、脱炭素が何かを調べ、市が設置したメガソーラー発電所を見学した後で、家電メーカーのツインバードを訪問し、脱炭素に大きく貢献する製品を学びました。

円卓会議では、新型ウイルスの拡大した時期に、ワクチンを効率的に保存・運搬できる「フリーピストンスターリングクーラー」と名付けられた製品をツインバードが開発したことを報告しました。冷媒にフロンガスではなくヘリウムガスを使用することで、省電力で低温まで冷やすことができること、オゾン層を守ることを説明しました。

冷媒にフロンガスを使わない環境に優しい
冷凍機製造工場を見学する生徒たち

製品内部の温度が下がるにつれ、どんどん霜が付いていく様子を見て「かなり低温まで冷やしていることが分かった」と語りました。マイナス100度まで冷やすことができるということです。「この技術は世界で多くの人に役立っていて、いろいろな国へ届けられていることもすごい」と感想を述べました。

生徒たちは「ツインバードはまだ誰もしないようなことをやるという信念を貫いている」と述べ、「みんなでかっこいい脱炭素や節電の取り組みを考えてみませんか」と訴えました。

ツインバード渡邉 桂三さん

かっこいい脱炭素への取り組みをみんなで考えることができたら、より多くの人が共感し活動の輪が広がるのではないでしょうか。
積極的な発信に期待します。

糸魚川市立青海中学校使用電力と製品開発 環境に配慮を実感

発表者
石井(いしい) 千彩季(ちさき)恩田(おんだ) 栞南(かんな)河南(かわなみ) 萌々子(ももこ)鈴木(すずき) 習太(しゅうた)
オブザーバー
田中 葉子(デンカ)
小竹 貴志(糸魚川市環境生活課)

糸魚川市の青海中1年生は昨年10月末、デンカ青海工場を訪ね、デンカが自社・共同で所有する水力発電所17カ所の一つ、大網発電所と資料館を見学し、脱炭素に貢献する製品について学びました。

発電所は「ダム式ではなく流れ込み式のため、発電に使った水は元の川に戻す環境に優しい発電方法です」と発表しました。

展示されている鉱石を観察する生徒たち

このほか、コンクリートの製造に二酸化炭素(CO2)を利用できる混和材「リーフ」の開発を報告しました。コンクリートを作る際に、セメントの代わりにリーフを使って、CO2を混ぜ合わせることで、CO2排出を大幅削減しました。「リーフを利用したコンクリートは、炭酸カルシウムによって通常のものよりも強く長く使えるコンクリートです」と語りました。

生徒たちは「最初にSDGsについて学び、目標達成へ全員で取り組まなければならないことを知りました。私たちや皆さんの学びと取り組みが私たちの望む未来につながると信じ、これからも生活していきます」と決意を述べました。

デンカ田中 葉子さん

脱炭素社会の実現に向けて、できることは何なのか自分事として考える姿に感動しました。
この学びを忘れず、日々の行動や勉学等に取り組んでもらえたら嬉しいです。

熱い意見交換 宣言文に決意込め

生徒たちは各校の発表後、ディスカッションで「脱炭素社会に向けて何が必要か、私たちができることは何か」を互いに述べ合いました。

まず「自分たちが知ることが第一歩」として、「知識を高めて授業で後輩に伝えていきたい」との意見のほか、「食品ロスを減らす」「行動し続ける」「節電も大切だ」など、日常生活の取り組みを挙げる生徒もいました。「理科や科学の勉強をして、(将来は)開発に取り組む」と、頼もしい回答もありました。

意見交換の後には、生徒代表5人が「友人や家族、地域の人たちに、持続可能な社会を築いていくことの大切さを伝えていきます」「世界が自然豊かで誰もが暮らしやすいものであるために、これからも脱炭素を考え取り組んでいきます」などの宣言文を読み上げ、脱炭素社会を目指す決意を新たにしていました。

講評:信念持ち『好き』追求を

新潟大学工学部 増田 淳教授

五つの中学校の発表は、いろいろなヒントが得られるもので、どれも大変興味深い話でした。テーマは多岐にわたっていました。

エネルギーに関しては「創エネ」「省エネ」「蓄エネ」という技術があり、バランスよくやらないとカーボンニュートラルは達成できないと言われています。これには、いろいろな分野の知恵を結集していかないといけません。一人では何もできませんが、周辺の人々と協力することで、技術は発展していきます。

中学生の皆さんは、興味をたくさん持っていると思います。高校、大学と勉強していく中で、好きだと思うことに信念を持って進んでください。

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