- リレーコラム
脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。
県内の理工系6大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎週木曜日夕に配信=第5週がある場合は休み)
リレーコラムVOL.25
石油資源開発株式会社(JAPEX)国内カーボンニュートラル事業本部 事業二部 東新潟CCS事業グループ長
松田 誠一郎
1973年、福岡県出身。2022年に石油資源開発(株)に入社。前職の電力会社で25年以上にわたり火力発電所の開発、運用や環境保全・管理などに携わったあと、その技術・知見を生かし、東新潟地域CCS事業開発を担当。2022年4月から現職。

CCSへの期待
当社は地域の皆さまのご理解を賜りながら1955年から長きにわたり石油・天然ガスの開発・生産を営んでいます。新潟県内では、新潟鉱場(新潟市東区)や片貝鉱場(小千谷市)など当社の主力生産拠点があり、地域のお客さま、ひいては我が国のエネルギー安定供給に貢献しています。
現在、二酸化炭素(CO2)を中心とする温室効果ガスの排出量の増加により、地球温暖化が進行する中、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)への関心が高まっています。その実現手段として、省エネルギー技術や再生可能エネルギーの活用などが広く知られていますが、その他の重要な選択肢として CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)があります。当社は、これまで石油・天然ガスの開発・生産で培ってきた技術・知見と高い親和性のあるCCS事業によるCO2削減への取り組みを通じ、カーボンニュートラル社会の実現に向け積極的に貢献したいと考えています。
今回は、CCSについてお話しします。以下のとおり、当社が石油・天然ガスの探鉱・開発・生産で長年培った技術・知見は、CCS事業と親和性があり、既に使っている技術・知見をCCSに応用できます。また、探鉱・開発などを通じて地下構造に関する情報も豊富に有しており、CO2の貯留適地を探す素地があるなど事業化に向けての必要な条件が揃っています。

ここからは、CCSの仕組みをご説明します。工場や発電所などから排出されるガスからCO2を分離・回収し、地中深くに安全に貯留する技術です。以下のとおりCCSは、大きく分けて「分離・回収」、「輸送」及び「圧入・貯留」の3つの機能で構成されます。石油・天然ガスの生産とは逆の方向でCO2を処理すると考えていただけると分かりやすいと思います。



CCSは、対策が困難な産業のCO2の排出量削減に効果を発揮し、持続可能な未来を築くための重要な役割を果たします。CCSへの期待の高まりを踏まえ、事業環境を整備するために、2024 年に「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)」が公布されました。CCS事業法では、CO2貯留事業を「許可制」、CO2導管輸送事業を「届出制」とし、事業や保安に関する規制が設けられています。
(1)探査:2024年8月5日 施行
(2)試掘:2024年11月18日 施行
(3)貯留事業・導管輸送事業:2026年5月施行予定
事業環境が整備される中、当社は国の支援を受けCCSの事業化に向けて検討を進めています。
最後になりますが、当社が取り組むCCSの推進には、地域の皆さまのご理解、官民の連携が必要不可欠です。日々、信頼される企業を目指し、CCSの普及・促進に向けた各種活動を行っています。今後も地域の説明会やイベントへの出展などを通じて対話を重ね、地域の皆さまに信頼されるパートナーを目指します。