- 紙面シリーズ
私たちが描く新潟の未来と脱炭素社会
にいがた脱炭素プロジェクト「中学生円卓会議」が2月15日、新潟市中央区の新潟日報メディアシップで開かれました。県内四つの中学校が地元企業の見学や講義を通じて脱炭素の取り組みを学習。円卓会議では、訪問先の企業や自治体の担当者がオブザーバーとして見守る中、生徒たちは成果を発表し、意見交換をしました。円卓会議の様子を紹介します。
長岡市立大島中学校(バイオガス発電班)生ごみで発電! 身近なごみを考えるきっかけに
- 発表者
- 近藤 大海・ 金子 琉璃・ 髙野 隼輔・ 西方 彩花・ 渡辺 恵
- オブザーバー
- 行平 ふみ(長岡市環境部 環境政策課)
「地球温暖化とは何か?」から学び始めた長岡市の大島中1年生は、同市の脱炭素の取り組みの一つ「再生可能エネルギーの日常的な利用」に注目し、長岡市のごみ処理施設「寿クリーンセンター」を訪れました。発表では最初に、見学で学んだバイオガス発電の流れを紹介。生ごみを受け入れた後、砕いて不適合物を取り除き、発酵によりバイオガスを発生させ、いったんガスホルダーに貯めてから発電機を回して発電する仕組みを説明しました。
説明を受ける生徒たち
メリットは、ごみで電気が生み出せることに加えて、燃やすごみの量を減らして運搬にかかるCO2の排出を減らせること、さらに発酵の残りかすを燃料や肥料として再利用できることなど多岐に渡ると報告しました。さらに、安定的にバイオガス発電を行うためには、ごみの分別が最も重要だと力説。正しく分別された生ごみが増えれば発電も増やせて、燃やすごみも減らすことができると伝え、「混ぜればごみ、分ければ資源」とスローガンにして発信しました。

長岡市立大島中学校(太陽光パネル班)雪国での可能性に、再エネの理解深める
- 発表者
- 石垣 那奈・ 高見 優人・ 山口 瑛士
- オブザーバー
- 近藤 弾・藤井 芳輔(イートラスト)
再生可能エネルギーとしての太陽光発電に注目した太陽光パネル班は、雪国に適した太陽光発電を長岡市とともに実証実験しているイートラストの説明を寿クリーンセンターで受けました。発表では、雪の積もる冬期でも安定した発電量を確保するため、実証実験では雪がたまらないようにパネルの角度を変えて発電量を測定し、30度に調整したこと、さらに屋根や敷地の形に合わせて設置できるパネルについても紹介しました。
はじめに抱いた「冬でも発電しているの?」という疑問に対してさまざまなアプローチで探られていると学んだ生徒たちは「改めて電気の大切さを知り、危機的な状況にあることを、自分のこととして考えられるようになった」と成果を伝えました。自分たちにできることとして「給食の食べ残しを減らそう」「暖房中は教室の戸を閉めて節電に努めよう」の2点を提示。学びを通して「脱炭素のアクションを起こさないと自分たちも次世代も暮らしが苦しくなる。小さな一歩でも行動していこう」と呼びかけ、「Think globally, Act locally」と掲げました。

イートラスト近藤 弾さん
雪国ではどう取り組んでいるかにポイントを絞っていて、分かりやすい発表でした。「自分たちに何ができるか」をキャッチーなフレーズにしたのも、とても良かったと思います。

聖籠町立聖籠中学校安定供給と脱炭素を支える火力発電からエネルギーを考える
- 発表者
- 亀井 海良・ 菅原 杏・ 諏訪 由希乃・ 山口 澄泰・ 輕部 颯祐
- オブザーバー
- 及川 雄太・小林 由香(東北電力)
聖籠町唯一の中学校である聖籠中3年生は、自分たちの町にある東北電力東新潟火力発電所を訪れ、発電の仕組みや、二酸化炭素(CO2)排出量をより少なくするための取り組み事例について学びました。発表は、ボイラで燃料を燃やし、蒸気タービンを回転させて発電する従来型の火力発電について紹介し「二酸化炭素を排出する発電をこのまま続けていいの?」との問いかけから始まりました。続けて、火力発電の大切な役割として、電力の安定供給があること、再生可能エネルギーが広まる中、その出力変動を補う「調整役」としてますます重要性を増していると知り、改めて火力発電の必要性を認識したと報告しました。
また、東北電力では、ガスと蒸気のタービンを組み合わせ、より少ない燃料で発電する「コンバインドサイクル方式」の導入を今後も進めていくことや、水素混焼実証やバイオマス発電などにも取り組み、脱炭素を総合的に推し進めていると伝えました。学習を通して、「カーボンニュートラルに会社全体で取り組んでいると知った」「あたりまえのありがたさを知った今、普段の生活で何ができるのかを考えていきたい」など新たな気づきがあったようです。

東北電力小林 由香さん
火力発電の役割や新しい取り組みに光を当ててくれました。発電所見学を通して、難しいエネルギー問題を自分の暮らしと結び付け、自分ごととして考える姿勢に頼もしさを感じました。

柏崎市立第一中学校地域一体となって脱炭素をリードする決意を提示
- 発表者
- 伊藤 美桜・ 丸山 旬・ 矢代 べに
- オブザーバー
- 貝羽 健吾(リケンNPR)
前川 岳士(柏崎市 電源エネルギー戦略室)
柏崎市の第一中1年生はまず、自分たちが暮らす柏崎について学んだことを発表しました。「エネルギーのまち」と呼ばれるようになった理由、どのように脱炭素に取り組んでいるのかの2点をまとめ、「第三の変革期にある今、電気の自給自足で脱炭素を目指している」と紹介。具体的な事例として、自動車のエンジン部品を作っているリケンNPRの柏崎工場を訪ね、水素事業について学んだことを発表しました。同社では、燃やしてもCO2を排出しない水素に着目。技術を生かしてエンジンを改良し、水素を燃やして走るトラックを開発しました。
車らしい力強さを備えた水素エンジンは、脱炭素化にも貢献し、クリーンな未来が期待できると伝えました。そして「柏崎がエネルギーのまちとしてあり続けているのは、人々の努力と挑戦の結果であり、地域一体となって取り組んできたからこそ」と主張。「エネルギーとともに歩んできたまちとして、脱炭素でリードしていきたい」と未来に向けて強い意志を示しました。

柏崎市 電源エネルギー戦略室前川 岳士さん
「脱炭素エネルギーを周知したい」という柏崎市の思いを代弁してくれました。
脱炭素エネルギーを活用している具体的な事例を紹介することで、認知にもつながったのではないでしょうか。

リケンNPR貝羽 健吾さん
市の歴史から現在の取り組みまでを、丁寧にまとめた発表でした。脱炭素社会は一人ではつくれません。地域の取り組みを知ってもらい、一体となってゼロカーボンシティを目指しましょう。

三条市立第一中学校CO2排出を減らす給湯器や取り組みに共感
- 発表者
- 佐藤 蒼太・ 杉本 宙・ 堀川 大和
- オブザーバー
- 酒井 大貴・星野 敏広(コロナ)
三条市の第一中 科学部1年生から3年生は、同市内にある暖房・住設機器製造のコロナを訪ね、脱炭素社会に向けてどんな取り組みをしているのかを学びました。まず、同社が特に力を入れているヒートポンプ給湯器「エコキュート」について説明。熱を運ぶ冷媒にCO2を使って空気の熱を取り込み、水をお湯にする仕組みで、CO2の削減につながることを報告しました。
次に、本社社屋では遮光ガラスを採用し、日射熱を減らして冷暖房の消費電力を減らすように努め、さらにCO2を発生しない水力発電所の電力を導入することでCO2の排出を実質ゼロにしていることを発表しました。見学と学習を通して「身近なところに温暖化対策があることが分かった」と生徒たち。「自分たちにできることは何だろう」と問いかけ「毎日の生活の中で工夫できること、無駄を減らすことを考え続けていきたい」と、これからの決意で結びました。

コロナ酒井 大貴さん
脱炭素社会の実現には、一人ひとりが学び、日常から節電、節水などに取り組むことが大切です。円卓会議で学んだことを周りの人たちに広げていき、一緒に脱炭素への道を歩んでいきましょう。

発表を踏まえて積極的に意見を交換
生徒たちは各チームの発表後「脱炭素社会に向けて私たちができること」をテーマに意見を交わしました。
「普段できることから始める。それが第一歩」と他校の発表を踏まえた意見を皮切りに「私たちの中学でも給食の残りが多いので、まずそこから取り組んでいきたい」など学校生活に結び付けた意見が出ました。
「自分たちが住んでいる地域でどのような取り組みが行われているかをしっかり知ることも大切」と地域に目を向け、ともにできることを探していく姿勢も見られました。
ディスカッション後には、生徒代表5人がまとめを発表。「他人任せは時代遅れ。小さなことを自分から行い、他の人も巻き込めるようにしたい」「さらに理解を深めて、持続可能な社会を作る一員として活動していきたい」と決意を新たにしていました。

講評:今日の気持ちを忘れずに学びを深めて
「いかに伝えるか」を考えられた非常に素晴らしい発表でした。再生可能エネルギーの活用が求められ、日本で取り組みが行なわれて約50年、やっと太陽光発電が普及してきました。このように、研究開発には時間がかかります。しかも世の中は変わります。化石燃料の将来、脱炭素や再生可能エネルギーを取り巻く事情。また、数年前まで「減る」と言われていたエネルギー需要はAI普及などで増える見込みに転換しています。世の中の変化に対して柔軟に、そして多角的な視点で考え、対応することが求められています。
生徒の言葉の中に「一生忘れずに」とありましたが、ぜひその気持ちを忘れずに、今日の意欲のままに学びを継続してください。
新潟大学工学部 増田 淳教授


長岡市環境部 環境政策課行平 ふみさん
これからを担う若い世代が発信者となる、いい取り組みでした。「混ぜればごみ、分ければ資源」を忘れずに、今後も生ごみの分別にご協力いただけたらうれしいです。