- リレーコラム
脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。
県内の理工系5大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎月第4木曜日夕に配信=祝日の場合は変更)
リレーコラムVOL.46
新潟大学 工学部工学科 機械システム工学プログラム 准教授
山縣 貴幸
東北大学工学部機械電子工学科に進学し、同大学大学院工学研究科バイオロボティクス専攻博士課程を修了。博士(工学)。
2009年より新潟大学自然科学研究科に助教として着任、同大学工学部の助教を経て2021年より現職。

風車ブレードエロージョン対策のための地上試験開発
風車ブレードエロージョンとは
脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、新潟県でも村上胎内洋上風力発電プロジェクトが進められています。遠くから見るとゆっくり回っているように見える風車ですが、大型の風車では羽根(ブレード)の先端がおよそ時速360キロ、新幹線と同じくらいの速さで動いています。これほどの速さで動いているブレードに雨粒・砂・雹(ひょう)などがぶつかると非常に大きな衝撃が生じるため、運転を続けるうちにブレードの先端が少しずつ削れて傷んでいきます。この現象を「風車のブレードエロージョン」と呼びます。

パルス噴流を用いたエロージョン試験
ブレードエロージョンが進むと、羽根の形が崩れて風を効率よく受けられなくなり、発電量が落ちてしまいます。さらに深刻な場合には羽根そのものの強度が下がり、安全上の問題にもつながります。日本は世界182カ国中48位と比較的雨が多い国(年間降水量1,668ミリ)であるため、風力発電をさらに広めていくには、エロージョンを防ぐ素材や対策の開発と、損傷がどのように進むかを正確に予測した上での効率的なメンテナンスが欠かせません。しかし、実際の風車を使ってさまざまな天候条件での実験を行うことは現実的ではありません。そこで、地上でエロージョンの現象を再現する試験が必要となります。
私の研究室では、高速な水の柱をブレードの材料にぶつける「パルス噴流式試験装置」を開発し、どのように材料が削れるか、また実際の風車で起きているエロージョンとの関係を研究しています。この装置では、高圧ポンプで水を高速噴流にした後、小さな穴の開いた回転する円盤に通すことで、短い間隔で繰り返しぶつかる水の柱(パルス噴流)を作り出します。この方法により、狙った場所に安定した速さで水をぶつけることができます。この試験によってエロージョンがどのように起きるかのメカニズムを解明できれば、損傷の進み方をより正確に予測する手法の開発や、エロージョン対策品の性能評価に役立てることができ、風力発電による安定したエネルギー供給の実現につながります。

