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  • リレーコラム

脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者たちが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。

新潟大や長岡技術科学大など理工系6大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(第1、3木曜日夕に配信)

リレーコラムVOL.8

新潟大学自然科学系(工学部)教授(カーボンニュートラル融合技術研究センター副センター長・太陽熱利用分野代表)
児玉 竜也こだま たつや

1966年、新潟市中央区出身。東京工業大学大学院理工学研究科修了。博士(理学)。1995年4月、新潟大学工学部助手。同助教授を経て、2003年4月から現職。

太陽熱からクリーンな水素をつくる

日本政府が宣言した「2050年にカーボンニュートラル」を実現するためには、海外の豊富な再生可能エネルギーから水素を製造し、それを日本に水素サプライチェーンで輸送することが必須です。化石燃料を使用して水素をつくっても二酸化炭素を回収隔離すれば二酸化炭素の排出は抑えられますが、隔離できる量には限りがあり、できるだけ早く太陽エネルギー等の再生可能エネルギーを主体とした水素製造を実現させることが世界共通の目標です。

新潟大学で私が取り組んでいる「太陽集熱による水熱分解水素製造システムの開発」は、オーストラリアや中東等の太陽日射が豊富なサンベルト地域の安価な太陽熱を使って、水を熱で分解して水素を製造する新しいシステムの研究開発です。すなわち、太陽光を反射鏡で集めて得られる高温の熱(1200℃以上)のみをエネルギー源にして水素をつくるという、水の電気分解とは全く異なる技術です。比較的、日射量の多い宮崎市(宮崎大学)で小型システムを建設し、太陽集光技術、ソーラー反応器、触媒などの必要な要素技術を開発しました。現在は、オーストラリアの国立研究所CSIROと連携して、オーストラリアのサンベルトにおいて、児玉研究室が開発した500kWシステムの実証試験に取り組んでいます。

実用化するには、製造したソーラー水素が安価である必要があり、それにはさらなる大型化が必須です。現在、取り組んでいる500kWの実証試験で得られる知見を活用して、最終的には数十MW級に大型化しなければ、サンベルト地域であっても経済性を得ることはできません。また、同じシステムを使って、より大量の水素を製造するには、高活性の水熱分解触媒の開発が効果的です。単純に言うと、2倍の水素製造能の有する触媒を使用できれば、同じ大きさの太陽熱プラントを使って2倍の水素を製造できるので、価格が半分になります。新潟大学の児玉研究室は、このような水熱分解触媒の開発に関しても世界のトップランナーであり、今後も、海外の研究機関、国内企業等と連携して、サンベルトにおける太陽熱水素製造の大型実用化を目指して取り組んでいきます。

太陽集熱による水熱分解水素製造システムの開発

太陽熱からクリーンな水素をつくる

太陽日射の良い各国・地域からその利用が期待されています。太陽光を反射鏡で集め高温状態にし、この高温の太陽熱で水を分解し、クリーンな水素エネルギーを製造する技術を開発しています。

太陽集熱による水素製造システム

宮崎大学と共同で建設した100kW級の太陽光集光システム等を用い、実用化に向けた要素技術開発を行ってきました。

実用化を目指しオーストラリアでの実証研究事業に参画

オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)の太陽熱による水分解水素製造の実証研究事業に参画し技術協力しています。

この度の実証実験で技術を確立し、持続可能な水素社会への道筋をつけることを目標としています。

ARENA実証研究事業
Solar Thermochemical Hydrogen Research and Development

研究代表機関:CSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)
研究参画機関:新潟大学、エネルギー総合工学研究所
研究期間:2018年10月~2024年
研究費総額:424万豪ドル

実証研究事業で使用するCSIROの500kW級太陽光集光システム
(豪州・ニューカッスル)

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