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  • リレーコラム

脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。

県内の理工系6大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎週木曜日夕に配信=第5週がある場合は休み)

リレーコラムVOL.24

新潟大学自然科学系(工学部)教授
福井 聡ふくい さとし

1969年、大阪市出身、横浜国立大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。新潟大学工学部助手、同助教授を経て、2014年4月から現職。

超伝導技術による電力・エネルギー機器のイノベーション

カーボンニュートラルの達成や安心・安全・レジリエントな社会システムの実現に向け、近未来の電気エネルギー機器・システムには、高効率・高信頼・環境調和性を同時に実現できるイノベーションが求められています。超伝導の工学的メリットは、電気抵抗がゼロであること、高密度で大電流を流せること、強磁場を発生できることです。これらのメリットを存分に生かせば、常伝導では実現困難なエネルギー効率が高く環境に優しくコンパクト・大容量な電気エネルギー機器・システム、各種産業機器の実現が期待できます。このように「Enabling Technologyとしての超伝導」を種々の分野に社会実装することを最終目標として研究に取り組んでいます。

高温超伝導回転機の研究開発

回転機(モータ・発電機)は電流と磁場の相互作用によって電力を動力に変換したり、逆に動力を電力に変換する装置です。そのためには、電流を流すコイルと磁場を通す通路が必要です。一般に現用の回転機では、前者に銅線のコイル、後者に鉄心という磁性材料のコアを用います。銅線の電流容量は1mm2当たり5-10A程度であり、鉄心の飽和磁場は高々2T程度です。また、銅線や鉄心は損失を発生します。従って、現用の回転機では、これらの材料的な特性によって出力・体格・重量は制限を受け、小型軽量化・高効率化には限界があります。これに対し、超伝導の超低損失・大電流(密度)・強磁場という特性を生かすことにより、銅と鉄の材料的限界を突破し、大容量・コンパクト・高効率な回転機の実現が期待できます。しかし、材料を単に超伝導材料に置き換えるだけでは性能向上は望めません。実用化のためには、超伝導固有の特性を精密に考慮した機器特性の解析・設計技術の確立とそれに基づいた開発が必要です。私の研究室では、高温超伝導を適用した以下の回転機の研究を行っています。

  • 大型風力発電用高温超伝導同期発電機の研究(図1)
  • 大型電気推進船用高温超伝導同期モータの研究(図2)
  • 高温超伝導誘導同期モータの研究(図3)
図1:高温超伝導大型風力発電機の実証研究
図2:20MW級高温超伝導同期モータの研究
図3:50kW級高温超伝導誘導同期モータの研究

高温超伝導応用電力機器の研究開発

電力システムにおいて、カーボンニュートラルの実現のためには、再生可能エネルギ-発電の大量導入が不可欠です。一方、再生可能エネルギーのほとんどは変動性(Variable Renewal Energy : VRE)であり、その割合が高くなり同期電源が減少すると、調整力不足、慣性不足、短絡容量低下など電力系統の安定性を阻害し大規模停電の発生リスクを大きくする種々の問題が生じることが懸念されます。つまり、VRE発電の大量導入は大規模停電の発生リスクとの比較衡量で論じられることが多いですが、現状ではその基準はあまり高くありません。将来に向けて、この比較衡量の基準をより高く引き上げるための技術開発が必要です。高温超伝導を用いた電力ケーブル、エネルギー貯蔵装置、発電機、限流器などは、これらに問題に応えることができる革新的技術です。私の研究室では、慣性補償用高温超伝導磁気エネルギー貯蔵装置(Superconducting Magnetic Energy Storage : SMES)(図4)や小型・コンパクト・高効率化が可能な高温超伝導回転機に関する基礎研究を行っています。

図4:1GJ(100MW-1s)級高温超伝導SMESの概念設計

高温超伝導応用産業機器の研究開発

超伝導を用いることにより、容易に強磁場の発生・利用が可能になります。強磁場を利用することにより、様々な産業機器の高性能化や高効率化が期待できます。例えば、高温超伝導マグネットによる強磁場を利用することより、アルミなどの非磁性・低抵抗金属を高効率で誘導加熱する装置が実現できます。私の研究室では、テラル(株)などと共同で経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業の補助を受け、高温超伝導マグネットを用いた400kW級アルミ誘導加熱炉の実証装置を開発しました(図5)。現在は、この実証装置をスケールアップした750kW級の装置を開発中で、今秋にもアルミ工場で実可動試験を実施し、早期の上市を目指しています。また、中部電力と共同で、ダイカストプロセスへの応用を目指し、高温超伝導マグネットを用いたアルミ材料溶融の試験装置の開発も行っています(図6)。

図5:高温超伝導マグネットを用いた400kW級アルミ誘導加熱装置
図6:高温超伝導マグネットを用いたアルミ材料溶融試験装置

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