- リレーコラム
脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。
県内の理工系6大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎週木曜日夕に配信=第5週がある場合は休み)
リレーコラムVOL.23
長岡工業高等専門学校 電気電子システム工学科 教授(オープンソリューションセンター長)
島宗 洋介
1974年 新潟県長岡市出身。東北大学工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)
2002年 株式会社富士通研究所入社。
2015年 長岡工業高等専門学校電気電子システム工学科着任

高専生の若さとアイディアに期待!
長岡工業高等専門学校(長岡高専)の島宗です。電気電子システム工学科で電子回路や電気電子材料などの授業を受け持ち、研究室では太陽電池に関する研究を行っています。「脱炭素」の具体的な行動指針の一つに、電源構成比に占める化石燃料の比率を抑え、再生可能エネルギーを増やすというものがあります。太陽光発電は再生可能エネルギーの一つとして、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて大きな役割を担うことを期待されています。このことは研究における強力な動機づけになります。一方、太陽電池開発はとても「楽しい」ということも研究を行う動機の一つです。私が所属している高等専門学校=いわゆる“高専”は、ロボコンなどで耳にしたことがある人も多いと思いますが、中学卒業後に入学し、5年間にわたり専門知識を学ぶことができるユニークな教育機関で、大学と同じ“高等教育機関”に分類されます。本校において、学生達は4年生の後期になると各研究室に配属され、論文などを読み、研究の準備を始めます。そして5年生で本格的に研究に取り組み、成果を卒業研究論文としてまとめます。卒業後に専攻科に進み、2年間をかけてより進んだ研究に取り組む学生もいます。修了時点では少なくとも3年間は研究を行ったことになります。私たちが取り組む薄膜太陽電池の研究開発では、真空装置や熱処理炉を用いて1μmにも満たない薄膜を複数層重ねて太陽電池を作成します。各層の薄膜の作り方次第で、太陽電池としての特性が大きく変わります。完成して光を照射しながら電気特性を測定し、予想以上に発電していたときの喜びたるや、なんとも言えない達成感があります。太陽電池の製造から評価にいたるすべてを学生が担当します。失敗することの方が多いですし、性能が大きく改善することなどはごく稀です。でも学生達は、自分の手で試行錯誤を繰り返す過程で様々なスキルを身に付けることができます。また、完成したデバイスの性能が悪かったとしても、その原因を考える過程で様々な知識を身に付けていきます。そうした材料・デバイス分野を含むモノづくりの一連を高専では19~22歳程度の若い学生が体験することができるのです。当校の電気電子システム工学科では、そうした研究開発の醍醐味をさらに低学年にも知ってもらおうと、令和6年度の3年生の学生実験において各教員の専門分野のテーマでミニ研究を試行的に行いました。当研究室でも、授業時間内に製造・評価が可能な簡単な太陽電池を新規に開発し、3年生に様々な実験をしてもらいました。その中から興味をもった学生が夏休みを利用してさらに研究をすすめ、予想以上に性能のよい太陽電池を実現してくれました。議論の過程で新しいアイディアがどんどん湧いてくる等、やはり若い人の感性ってすごいな…と感心させられました。この新型太陽電池には、炭素からなるカーボンブラックが含まれています。ものを燃やした時にでる煤から、このカーボンブラックのような太陽電池の構成材料を回収、精製して再生可能エネルギーを生み出す…なんてことができたら面白いなと妄想しています。そんなアイディアも夏休みに一緒に実験した学生がくれたヒントがベースになっています。モノづくりの一連を経験し、研究開発の醍醐味を味わい、それが「脱炭素」につながるかも…。このワクワクをもっと多くの若い人たちに知ってもらいたい!
みなさん、高専で一緒に“研究”してみませんか?!

「ゼロから始める半導体デバイス開発」
