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  • リレーコラム

脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。

県内の理工系5大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎月第4木曜日夕に配信=祝日の場合は変更)

リレーコラムVOL.47

三条市立大学 教授
福井 隆史ふくい たかし

富士フイルム株式会社にてプリント配線板用デジタル露光装置の開発、インクジェット印刷機の開発、事業推進、品質管理に従事する傍ら、低温度差スターリングエンジンに関する研究成果をまとめ、博士(工学)を取得。2010年より東京大学工学部機械系2学科の非常勤講師も務める。2026年4月より現職。

身近にあるエネルギーをもっと活用しよう! 雪を使った低温度差スターリングエンジンから考える

産業革命以来、人類はより多くのエネルギーを利用することでより便利で快適な生活を送れるようになってきました。しかし、人類の営みが地球に与える影響が大きくなっている現在、便利で快適な生活を続けるためには、より環境負荷の小さいエネルギー源が求められています。このため、太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーを増やす取り組みが進められていますが、私たちの身のまわりで他にも利用できるエネルギーはないでしょうか。

新潟県をはじめとした北日本では冬には多くの雪が降ります。道路脇には除雪された多くの雪が積み上げられて通行の障害になり、また屋根に積もった雪の雪下ろしをしなければならないなど、生活する上で厄介者の雪ですが、実は雪にも大きなエネルギーが蓄えられています。皆さんは飲み物を冷やすときにはコップに氷を入れますが、それは氷が解けるときに大量の熱を奪うことができるからです。氷1キロが解けるときには333.6キロジュールの熱を奪いますが、これは1キロの水の温度を約80度上げるのに必要な熱量と同じです。この大きなエネルギー源が私たちの身のまわりにはあるのです。

新潟県の年間平均降雪量は、平成~令和の平均で465センチと言われています(新潟県道路管理課調べ)。新潟県の面積は1.26万平方キロメートル、雪の密度を50キログラム毎立方メートルとすると、1年間に新潟県に降る雪の総量は、30億トンとなります。雪1キロをとかすには氷と同じ333.6キロジュールのエネルギーが必要ですので、新潟県に降る雪が持っている融解熱はおよそ100京ジュールとなります(1京は1兆の1万倍、1兆は1億の1万倍)。100京ジュールがどのくらいのエネルギーかというと、新潟県全世帯の年間電力使用量がおよそ5京ジュールですので、新潟県に降る雪がとける融解熱の5%を電気に変えることができれば、新潟県の電力全てを賄えることになります。

わたしたちの研究室ではこの雪の持つエネルギーを利用できないかと考え、低温度差スターリングエンジンの研究を行っています。スターリングエンジンは温度差によって動作するエンジンで、ガソリンエンジン等と異なりどのような形で温度差を与えても動きます。そこで、冷却に雪を利用し、加熱には地熱や工場廃熱などを利用して温度差を作り、この温度差で発電する仕組みができないかを研究しています。

雪を使ったスターリングエンジンのイメージ図

小さな温度差から大きな仕事を取り出すことは簡単ではありません。しかし、様々な技術の進歩によって、これまではできなかったことができるようになっています。例えば、スターリングエンジンの主要部品の一つに再生器という部品があります。再生器はスターリングエンジンの内部を往復する気体から熱を受け取ったり、気体に熱を与えたりする役割をするものですが、近年3Dプリンタの進歩によってこれまででは作れなかった形状で作ることができるようになり、小さい温度差からでも大きな仕事を取り出すことができるようになりました。まだまだ実用化には解決するべき課題がたくさんありますが、太陽光発電の発電量が著しく少なくなる冬季の再生エネルギー源を目指して研究を進めています。

スターリングエンジンの原理図
3Dプリンタを使った再生器の例(対辺0.6mmの正六角形の穴の集合体)

大切なことは、便利で快適な暮らしができるようになった知恵を使って、より賢いエネルギーの作り方、使い方を考えることではないかと思います。身のまわりには他にも利用されていないエネルギー、無駄に捨ててしまっているエネルギーがないでしょうか? 昨日まではできなかったことでも、今日はできることがあるかもしれない、そう考えれば、脱炭素に向けてやれることはまだまだあるのではないでしょうか。

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