- リレーコラム
脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。
県内の理工系5大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎月第4木曜日夕に配信=祝日の場合は変更)
リレーコラムVOL.49
新潟工科大学 教授
倉知 徹
北海道大学工学部(応用物理学科、建築都市学科)、同大学院工学研究科都市環境工学専攻修了。博士(工学)。
神戸芸術工科大学デザイン学部助手、関西大学特任研究員、新潟工科大学准教授を経て、2024年から現職。
専門は、社会基盤(土木・建築・防災)/建築計画、都市計画/エリアマネジメント

「未来の地球への貯金」~学生が動画で伝える柏崎の脱炭素~
「脱炭素」という言葉を、ニュースで耳にしない日はないほどになりました。では、「あなたのまちでは、どんな取組が進んでいますか」と聞かれたらどうでしょう。すぐに答えられる人は、そう多くないかもしれません。
2025年度、新潟工科大学の学部4年生と大学院生が、柏崎市の依頼を受けて、市内の脱炭素の取組を紹介する動画をつくりました。太陽光発電所や企業を訪ね、担当者に話を聞き、撮影から編集までを自分たちで手がけています。完成したのは導入編を含む6本。短いものは導入編の1分足らず、本編も長いもので4分余りと、スマートフォンで気軽に見られる長さで、YouTubeのほかInstagramやTikTokなどでも公開されています。

本編の1本目は太陽光発電です。市内の太陽光発電所とあわせて、大規模な蓄電池を紹介しているのがポイントです。太陽光の発電量は天気や時間帯で変わるため、「つくった電気をためて、上手に使う」仕組みが欠かせません。雪国の柏崎なら、パネルの置き方にも工夫が要ります。脱炭素は、地域の気候や土地と切り離しては進められないことがよくわかります。
2本目では、その電気の「行き先」を追いかけます。市が出資する地域エネルギー会社「柏崎あい・あーるエナジー」の太陽光発電所の電気は、市役所や学校などの公共施設で使われています。学生たちは市役所や荒浜小学校、同社に話を聞きました。ふだん目にしている建物が、地元でつくった電気で動いている――そう知るだけで、脱炭素はぐっと身近になります。
さらに、INPEXの「柏崎水素パーク」やリケンNPRの水素エンジントラックなど、水素に光を当てた回もあります。企業編では植木組、ブルボン、リケンNPRの3社を取材し、なぜ脱炭素のエネルギーを選ぶのか、事業にどう生かしているのかを尋ねました。技術の説明で終わらず、「使う人」の思いに迫ったところに、学生ならではの視点が表れています。
6本を通して見ると、電気をつくる人、届ける人、使う人が、柏崎という一つのまちの中でつながっていることが見えてきます。専門家の話を、市民や同世代に伝わる言葉と映像に置き換えるのは、決して簡単な作業ではありません。制作に参加した学生も「漠然と理解していた『脱炭素に向けた取り組み』について見学などを通してしっかり学ぶことができた。それをわかりやすく伝えることの難しさも知った」と振り返ります。人に伝えようとするときにこそ、理解は深まるのです。学年の異なる学生が協働し、地域の方々との対話を重ねて一つの作品に仕上げていく過程そのものが、講義室の外に広がる大学の学びでもあります。
締めくくりの6本目のタイトルは「未来の地球への貯金~エネルギーのまち柏崎3.0~」。石油、原子力、そして新エネルギーへ――エネルギーとともに歩んできた柏崎の、これからの姿を描いています。今日の小さな取組の積み重ねが、未来の地球への「貯金」になる。まずは数分、動画をのぞいてみてください。自分たちのまちのエネルギーを知ることが、脱炭素への確かな一歩になるはずです。