- リレーコラム
脱炭素社会の実現へ新たな技術を生み出す新潟県内の研究者らが、自身の研究や脱炭素への思いなどを自由につづります。
県内の理工系5大学・短大・高専と、本県と関わりのある企業のリレーコラムです。(毎月第4木曜日夕に配信=祝日の場合は変更)
リレーコラムVOL.50
長岡工業高等専門学校 教授
赤澤 真一
2004年、奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科博士後期課程修了。博士(バイオサイエンス)。同COE研究員、和歌山県立医科大学博士研究員を経て、2006年長岡工業高等専門学校に着任。2022年より現職。専門は応用生物化学、ミミズの酵素、細胞、環境利用などを研究している。

子ども達に伝えたい!ミミズで挑むSDGsと「やってみる」の力
ミミズって知ってる?
「えっ、そんなの知ってるよ!土を豊かにするんでしょ」「そこら辺で干からびてたよ」「あとは、うーん、分かんない」って感じじゃないでしょうか?
私はミミズを本格的に研究し始めて約20年になりますが、研究するまでは皆さんとほぼ同じ感覚でした。ところが、研究すればするほど面白い!「ミミズって、こんなこともできるの?」と驚くことばかりなんです。
今回は、そんな身近だけど意外と奥深いミミズについて、数ある能力の中から、皆さんにも比較的なじみのある「廃棄物を分解して肥料を作る能力」を取り上げます。「それ知ってるよ」と思った方もいるかもしれません。でも、実際にミミズをたくさん育てて肥料を作ろうとすると、これがなかなか一筋縄ではいかないんです!
そもそもミミズとは?~ミミズクイズ~
さて、ミミズはどこにいるでしょうか?土の中だけ?いいえ、実は水の中に住んでいる種類もいます。昔、ドブ川などでよく見られたイトミミズも仲間で、汚泥などの有機物を分解する能力を持っています。
では、性別は?オス?メス?実はミミズは基本的に「雌雄同体」。つまり1匹の体にオスとメス、両方の生殖器官を持っています。私たちが研究しているシマミミズ Eisenia fetida も雌雄同体ですが、通常は2匹で交尾し、その後、卵の入った小さな「卵包」を作ります(図1)。

目はどうでしょう?答えは「ありません」。でも光は感じることができるので、光を当てるとサッと逃げます。どうです?知っているようで、意外と知らないことが多くないですか?
ミミズで肥料を作ろう!
ミミズは好き嫌いこそありますが、落ち葉、動物の糞、食品残渣など、いろいろな有機物を食べます。そして分解して排出し、植物が育つための肥料へと変えてくれます。これこそ、ミミズが「土壌の分解者」と呼ばれる理由の一つです。
この働きを利用したのが「ミミズコンポスト」です。しかもミミズは土の中を動き回り、土をふかふかにする働きもします。食べて、分解して、肥料を作って、土まで良くする。なかなか働き者ですよね。
特に窒素肥料を作るには多くのエネルギーが必要です。それなら、地域で出た廃棄物をミミズに食べてもらい、肥料に変えられたらすごくないですか?私たちは、このミミズの力を本格的に利用しようと研究を始めました。
研究のお話
さて、実際の研究内容です。現在、長岡緑地環境協同組合と共同で、「冬は寒い、夏は暑い長岡でミミズを本格的に養殖し、廃棄物を処理しながら肥料も作れないか?」という研究を進めています。その中でも私達は、扱いやすい液体肥料に注目しました(図2)。

まずはミミズの飼育箱作りからです。液体肥料を回収できる飼育箱を設計して建設。さらに温度センサーや、養殖場や飼育床の様子をスマホで確認できるIoTシステムまで設置しました。もちろん、これは私たちだけでは作れません。本校電子制御工学科の上村先生に協力して頂きました。高専は学科を超えた連携が非常にやりやすいのも魅力の一つですね。
そしていよいよ実験!餌を変えると肥料の3大要素である窒素、リン、カリウム量は変わるのか?長期保管しても成分は変化しないのか?本当に植物に効くのか?いろいろ調べました。
その結果、キノコを収穫した後に残る「廃菌床」を餌にすると、栄養分の多い液体肥料が得られることが分かりました。さらに、全窒素、リン、カリウムは長期間比較的安定していました[1]。「これはいけるぞ!」と思っていたのですが…
2025年6月、大事件が起こりました!
暑さで土中温度が39℃を超え、養殖場内はなんと50℃近くに。そして、ミミズがほぼ死んでしまったのです。これはまずい!そこで2026年度は、休日でも水を撒ける自動散水装置を導入しました。こちらは電子制御工学科の酒井先生の学生に協力してもらい、見事完成!今年の猛暑を乗り切ることができました(図3)。当初冬の寒さを心配してましたが、実際は夏の暑さが問題でした。やってみないと分からないものですね。夏の気温が想定外だったというのもありますが。


失敗しても、「じゃあどうする?」と別の分野の人たちと一緒に考える。研究って、実はこういうことの繰り返しなんですね。しみじみ。
そして今、研究は少しずつ地域にも広がっています。2026年秋からは国営越後丘陵公園でミミズ液体肥料の実証試験を始める予定です。高騰している肥料の代わりになるのか?実際に花壇等に撒いて確かめます。さらに学校近くの柿町では、空き家に第2養殖場を作り、地域の皆さんと一緒に運営する計画も進んでいます。
ミミズの力で廃棄物を肥料に変え、地域の中で資源を循環させる。そんな仕組みを長岡から作っていきたいと思っています!
最後に
ミミズには、今回紹介した肥料作りだけでなく、血栓を分解する酵素など、まだまだ面白い能力があります[1]。私自身20年研究していますが、「まだこんなことがあるのか!」と思うことがあります。
肥料が作れることは皆さんも知っていたかも知れません。でも、「知っているよ」と「やってみよう」は全然違います。実際にやってみると、難しいことだらけです。失敗もします。でも、その失敗から分かることや、次のアイデアに繋がることもたくさんあります。皆さんも、興味を持ったことがあれば、是非「やってみる」ことにチャレンジしてみてください!
最後に、たかがミミズ、されどミミズ。ちょっとミミズを見る目が変わってくれたらうれしいです。
- 参考文献:1.赤澤真一.ミミズの多用途性と研究の展開 土壌改良から宿主開発まで.化学と生物.62(6):291-298 (2024).
- 微生物化学研究室(長岡高専物質工学科)
- 長岡工業高等専門学校